サシャの強さを実感する。
サシャがいつも鍛錬をしているというその場所には、多くの騎士たちがいる。彼らはこの帝国に仕える騎士たちであり、サシャの姿を見かけるなり跪いた。
跪かれるのが当然と言った様子のサシャは堂々としていて凄くかっこいい。
「皆、楽にせよ。この二人は聖女と守護精霊である。失礼な真似をした者は我が処罰する」
「はっ」
サシャの言葉に騎士たちが答える。
そして騎士たちはサシャの言葉を聞いて僕らの方を見ている。視線のあった騎士ににっこりと笑いかければその騎士の顔がぼっと赤く染まる。僕の可愛さにやられたようである。
「……ウルリカはこれだけ愛らしいが、事前情報で伝えた通り男である。くれぐれもそこは勘違いしないように。聖女呼びのままにはするがな」
事前にサシャは僕の性別に関しては通達していたみたい。でも顔を赤くしていた騎士がはっとしたような表情なのを見るに、僕の性別を聞いていたのに忘れていたのかな。
「それでウルリカとブリギッドよ。その力を見せてもらえるか」
「うん! じゃあまず僕からね」
僕はそう言いながらサシャの目の前で、障壁を完成させる。練習はずっとしていたけれど、僕は平和に生きていたので特にこの力を使うこともなかったけれどね。でも磨ける位からは磨いていた方がいいってそう思っていたからこっそり練習していた。
聖女は守られるべき存在だからそういうのを磨く必要はないって考えの人も多かったから、中々表で練習出来なかったけどね!
こうしてヴァリマリラ帝国にやってくると、僕の生まれ育ったルズノビア王国は考え方が凝り固まった人が多かったなぁって思う。聖女はこうあるべきってそういう風に考えている人が多かった。それだけ聖女という存在がその国にとって特別だったのだろうけれども――うん、僕はなんだかこっちだとそういうことを強要されないのでなんだかすごく気が抜けている気がする。
「ほら、サシャ。これ、多分、サシャでも破れないと思うから攻撃してみて!」
「いや、流石に奥にウルリカがいる状態で攻撃はしにくい。一旦ウルリカはそこから出てくれないか」
「大丈夫だよ?」
「でも我がやりにくいのだ」
僕は障壁の中に居た状態だったのだけど、サシャは僕へ攻撃がしにくいみたい。別に障壁があるから大丈夫だけどなぁって思うけれど、サシャがやりにくいなら外に出ようと僕は障壁だけを残してその場からのける。
「では行く」
サシャはそう言ったかと思えば、大剣を手にする。
本当に大きい黒い刀身のもので、僕だと手に持つことも出来ないぐらいの重さに見えた。それを軽々と振り回すサシャを見ていると、凄いなぁと思った。
「サシャってそういう武器を軽々と振り回せて凄いよね。僕、重いもの持てないんだよね」
僕は重たいものを持てない。侍女が軽々と持っていたものも持てなかったりするぐらいである。
僕が凄いなぁとサシャを見ている間に、サシャがその大剣を振る。
そこから魔力が解き放たれる。その斬撃は、障壁や壁などへとあたる。……壁の一部が壊れている。サシャって簡単に建物とかも壊せるんだなってびっくりした。
「サシャ様! 壊さないようにしてくださいと言ったでしょう!」
「そう怒るな。ユエバード。それより見よ」
ユエバードに注意をされても、サシャは楽しそうに笑っている。その視線の先には、先ほど僕の張った障壁がある。
「傷一つついていない。素晴らしいな」
そう、サシャの言う通りその障壁には傷一つついていない。
楽しそうに笑っているサシャは僕の方を向く。
「ウルリカは凄いな。愛いだけではなく、これだけ立派な障壁を張れるとは」
「サシャも凄いよ! 僕ね、力ないからそういう大剣振り回せないもん。それに魔力で攻撃をするなんてかっこいい!!」
なんていうか、サシャって僕が見てきた誰よりも強い人間なんだろうなって思う。
ルズノビア王国に居た頃も、僕が聖女だからこそ沢山護衛はついていたけれどその護衛たちよりもずっとサシャは強いというのが分かる。
「サシャ、他に何が出来るの? 全部見たい! 建物が壊れないようにそっちに僕は障壁張るね!」
また何か壊れたらサシャが怒られてしまうから、僕は傷つかないように障壁を張る。
沢山障壁を張り終えると、サシャが「これだけ障壁を展開できるのか、素晴らしいな」と褒めてくれた。
僕はサシャに褒められたことが嬉しくて、にこにこしてしまう。
それからサシャが様々な攻撃を障壁へと繰り出した。色んな所に障壁を張っていたのだけど、地面がえぐれるような攻撃などもあって……やっぱりサシャは凄いなと思った。
ちなみに滅茶苦茶えぐられたその部分はブリギッドがちゃんと整備して綺麗にしてくれていた。
サシャが僕の張った障壁にひたすら攻撃を繰り出すと言う時間が続いた。僕の障壁はひたすら硬いので、サシャも中々傷をつけられなかったひびが入るぐらいはあったけれど、それもすぐに修復して強度を増してみたりした。
サシャは僕が障壁の修復や強度を増したり出来ることに驚いた様子だった。
「やはり聖女というのは凄いのだな。しかしこれだけの力を持っていることが噂になっておらぬとは、驚きだ」
「使う機会なかったからね! 僕はあくまで守られるべき聖女って立場だったから」
僕がそう言って笑えば、サシャは「もったいないな」などと言っていた。
それにしても僕の障壁にひびを入れるというだけでもサシャって本当に凄いなと実感した。
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