サシャはやっぱり可愛い
「サシャ! 迎えにきたよ。出ておいで―」
「恥ずかしがらなくていいのよ。私たち皆、お揃いだもの」
さてさてサシャが着替えをした部屋へと向かい、僕とブリギッドはそうやって話しかける。
それにしても恥ずかしがって中々出てこないなんて本当にサシャは可愛い女の子だよね。慣れない恰好をするだけでこうなるなんて、もっといろんな恰好してほしいなぁ。でも可愛い服装に慣れてきたら可愛く恥ずかしがることもなくなるかな? ただ自分は可愛いと開き直っているサシャもきっと可愛いだろうし、問題ないね。
「……ウルリカとブリギッドにはそれはもう似合うだろうが、我には似合わぬ」
「そんなことないよー。絶対可愛い。僕はもう見る前から可愛いって確信しているもん」
「そ、そんなことを言って! 我のことを笑ったりせぬか?」
「しないよー。だって絶対可愛いもんね。というか、こうやって恥ずかしがって動揺している段階で本当に可愛いと思うし」
何回も「我は可愛い」ってサシャに言わせたのに、まだまだ自分が可愛い女の子だってサシャは自覚していないみたい。
普段は堂々としているのに、慣れない服装をするだけでこうなるのってその段階で可愛いよね。
「私もサシャには可愛い服装似合うと思うの。おそろいで楽しく過ごしたいから出てきて欲しい!」
ブリギッドもそう言えば、サシャが顔だけを扉から出す。
「……出てやろう」
「うん。おいで」
僕が笑って手を伸ばせば、サシャは諦めたように笑って僕の手に自分の手を重ねた。
そしてサシャの姿が僕らの前に露わになる。
「わぁ、やっぱり可愛い。サシャは綺麗だからどんな姿でも似合うね」
「まぁ、似合っているわ。こうして三人でお揃いの恰好をするのも楽しいわね」
僕たちは色違いのワンピースを着ている。花柄でもいいかなと思ったのだけど、いきなり女の子らしさ全開だと恥ずかしいって言っていたから少し抑えめにした。とはいっても色んなポイントで可愛いが詰まっているワンピースなんだ。
袖の部分やスカートの下の方に花の飾りがつけられていて、胸元のポケットの部分にも糸で模様が描かれている。前にボタンがいくつもついているものなんだ。
サシャのはね、赤色。
それで僕のは黄色で、ブリギッドのは青色。
こうやって同じ形のワンピースを色違いで着るのは楽しいよね。サシャの方が背が高いから、こうやって僕らがサシャを中心に左右に並ぶと絵になるね。
「まぁ! とっても可愛いですわ」
「お似合いですわ」
侍女たちもそう言って褒めてくれて、僕は嬉しい気持ちでいっぱいになる。
「ほら、サシャ。やっぱり似合ってるって。サシャは本当にとても可愛いね」
僕がそう言って笑いかければ、サシャは顔を赤くして少しもじもじしていた。やっぱり可愛いよね。こういうサシャを可愛いって思うのは当然だよね。
「……くっ、辱めを受けている気分である」
「なんでー? 僕は凄く可愛いって本心から思っているんだよ? こんなにサシャは可愛いんだから、もっと自分は可愛いのだと自信をもっていいんだよ? ほら、また我は可愛いーって言ってみて?」
じーっと僕がサシャを見つめて言ったら、サシャは口ごもっている。
サシャは本当に恥ずかしがり屋さんだなぁ。
「我は可愛いー。ほら、復唱」
「我は可愛いー」
「あれ、なんでブリギッドが乗ってくるの?」
「ウルリカが凄く楽しそうだから!!」
僕がサシャに「我は可愛い」を言わせようとしていたら、何故かブリギッドが「我は可愛い」と言い出した。
どうやら僕がにこにこしているのがあまりにも楽しそうだったから、交ざりたくなったみたい。
「「我は可愛いー」」
サシャをはさんで二人で顔を合わせて、にっこりと笑って言う。
おお、楽しい!! これ、サシャも混ざったら絶対にもっと楽しいよ。というかね、サシャだって一人ではなく三人で言うのならば恥ずかしがらないかな?
そう思ってサシャを見る。そしたらブリギッドも僕と同じ考えだったみたいで、じっとサシャを見上げている。同じ考えをしているなんて、流石だよね。
「ほらほら、サシャ、一緒に言おう? 三人でならばサシャも恥ずかしくないと思うよ? ね?」
「私も三人一緒に「我は可愛いー」って言いたい! 二人でこれだけ楽しいのだから、きっと三人でやったらもっと楽しいもの」
僕とブリギッドは口ごもったままのサシャを見上げたままそう告げる。
「……」
サシャは顔を赤くしたまま、無言である。僕たちはそんなサシャに追い打ちをかける。
「サシャ、ほら、我は可愛いーだよ?」
「我は可愛いーって復唱しよ?」
「僕はサシャにも我は可愛いーって言ってほしいな。だって自分の可愛さに自信を持ったサシャはきっともっと可愛くなるもん」
「これだけ可愛いのいだから、我は可愛いーって言ってもいいと思うの。ウルリカなんていつも僕は可愛いって言ってるよ。三人でほら、言おう?」
僕とブリギッドはそんな風にサシャに告げる。そうしたらサシャは諦めたのか、小声で告げる。
「……我は、可愛い」
言った! と僕は嬉しくなった。
「じゃあ三人でいおう。せーの」
僕がそう言って促す。
「「「我は可愛いー」」」
そして三人で「我は可愛い」って言った。
なんだかとっても楽しい気分。
その後にサシャは顔を真っ赤にしていて、それが余計に可愛いなと思った。
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