どんな服を着ようか悩んでいたら、守護精霊がやってきました。

「ほら、見て。サシャ。侍女たちがカタログ持ってきてくれたよ。サシャはどんなのがいい?」

「……そのカタログに載っておるものを我が着るのか?」

「そうだよ? 凄く可愛いものがいっぱいでしょ?」






 僕とサシャは金色の縁の赤いソファに隣り合って座っている。

 凄くふかふかのソファで、座っていると眠ってしまいそうなぐらいなんだよ。






 今、僕がサシャに見せているカタログは侍女たちが意気揚々と持ってきたものだ。どうやらこの城に仕える侍女たちは僕同様にサシャに可愛い恰好をさせたい勢力がいたみたい。

 そうだよね、僕も気持ちが分かる。

 サシャはとっても綺麗な女の子なのに、可愛い恰好しないのはもったいないよ。サシャにはそういう恰好がきっと似合いそうだから。






「そうであるが……、可愛すぎぬか? ウルリカにはそういう服装は似合うかもしれぬが、我は……そんなもの似合わぬと思うが」

「そんなことはないよ! サシャは凄く可愛い女の子なんだよ! だからもっと自分は可愛いって思おう? ほら、我は可愛いって言ってみて」

「……我は、可愛い?」

「なんで疑問形なの? サシャは可愛いんだよ。ほらほら、我は可愛いって、また言ってみて」







 可愛いと言われることに慣れていない様子のサシャが可愛いなぁと思いながら再度そういう。僕の可愛い顔がお気に入りのサシャは、僕が頼むと結構断らない。

 まぁ、流石に本当に嫌なことなら断るだろうけれど、この位なら僕に言われるがままである。








「……我は可愛い」

「うん。可愛いよ。だから、サシャにはこういう可愛いものもちゃんと似合うからね! 僕的にはこういう綺麗なドレスもいいかなと思うのだけど。というか、サシャってドレスとか全然着ないの? もったいないなぁ。パーティーとかでサシャが綺麗なドレスを着たら皆釘付けになるのになぁ」

「……城内でウルリカと一緒にそういう恰好をするのは、やると我が言ったのだからやるが、パーティーなどでは着ぬ」


「そっかぁ。でもそれもありだよね。サシャの可愛い姿、僕が独り占めだって思うと嬉しいよ」





 僕が笑ってそう言えば、サシャは耳を赤くしている。照れているみたいで可愛いなぁと思って、にこにこしてしまう。







「あとはこういうワンピースもいいなぁって思うな。サシャってこういう明るい色とか似合うと思うんだ。あと花柄とかもいいよねぇ。お花って可愛いよね。僕、花も好きなんだよね」

「花柄……花は愛いと思うが、我に似合わんと思うが……」

「もー、サシャってば似合わないと思うばっかり! 大丈夫だよ。サシャは凄く可愛いから絶対に似合うから。それは僕が保証するよ。侍女服も貸してもらって来てみようよ。それもきっとサシャに似合うから。というか、サシャみたいな可愛い女の子は似合わない衣装なんてないんだからね?」





 サシャは似合わないと思うばかり口にするけれど、サシャはとても綺麗で可愛い女の子なのでなんでも似合うと思う。






 サシャって普段から化粧とかもあまりしないみたい。それでもすべすべの肌なのは、体をよく動かして健康的だからなのかな。サシャって凄く普段から体を動かして、自分のことを鍛えているみたいだから。僕はあまり体力がないけれど、サシャと一緒に運動してみようかな? ルズノビア王国に居た時は、そういうのも聖女として相応しくないって言われてたけれど、体を鍛えるのってありかなって思ったりする。






「……ウルリカが、我と一緒に着たいものを選ぶといい」

「じゃあ、沢山選んじゃうけどいい? いっぱいサシャに着て欲しいもの沢山あるんだ!! このカタログに載っているもの全部着て欲しいって思うし」

「いや、流石にそれは勘弁したい」

「むー、じゃあちょっとまず着てもらうものを厳選するね。となると、どれにしようかなぁ」






 僕はそう言いながらサシャに一番最初に何をきてもらおうかと思考する。

 そうしていると、急にその部屋の中にユエバードが駆け込んできた。






「ウルリカ様!!」

「ユエバード、どうしたの? そんなに慌てて」







 ユエバードはなぜだかとても焦った顔をしている。

 あまりそうやって取り乱すことがないタイプだと思っていたから、その様子に驚く。

 ユエバードがそれだけ焦る事態でも起きたのかな。








 そう思っていたら、



「ウルリカ様。ルズノビア王国の守護精霊を名乗る方が来ています。ご本人か確認するためにも来ていただいていいですか?」



 そんなことを言われる。




「ブリギッドが?」






 そのうちこちらに来るだろうなと思っていたけれど、思ったよりもブリギッドが来るのが早くて驚く。

 それにしてもユエバードがブリギッドのことを確認してほしいと言っているってことは、人に擬態してきたのかな? 一見すると精霊に見えないぐらいにブリギッドは擬態することも出来るからね。

 僕はそんなことを考えながらソファから立ち上がる。





「サシャ、僕行ってくるね」

「我も行くぞ」






 僕がサシャに声をかければそう言われたので、一緒にブリギッドの元へ向かうことになったのだった。




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