2024/09/08 伊織ちゃんと美人

ファーストフード店で、伊織とるいと礼子の3人がおしゃべりしていた。

「なんだよニタニタして。キモいなぁ」

るいはフライドポテトをつまみながら、伊織の表情を咎める。

「ふふ、えへへ……。わたしー、ちょっとぉー良いことがあってぇー……」

「ぶりっこクソうぜぇなぁ」

るいは顔をしかめる。

「何があったんですか?」

礼子が問うと、伊織は得意げに微笑む。

「昨日、美人って言われちゃってさ〜」

「は?? ブスの間違えだろ?」

「ひどいよ! 私の耳そこまでおかしくないもん!」

「誰に……どういう話の感じで言われたんですか?」

「知り合いのおじさんにね、よく分かんないんだけど、はっぽうの美人がなんとかって」

「はっぽう〜? 発泡スチロールがなんだって? 聞き間違えだろおまえの」

「……」

「どうしたの、礼ちゃん? つらそうな顔して。おなかいたい?」

「いえ……。その……八方美人って褒め言葉ではなくて……」

「ほら〜〜! やっぱな! こいつが美人なんておかしいと思ったんだよ」

「おかしくはないよ!?」

嬉しそうなるいに、不満げな伊織。

「八方って東西南北とそのあいだの方角で……だれにでもいい顔するみたいな……」

「へぇ〜! 8方向どこからみても美人!とかじゃないんだね」

「まあ、スズは8方向どころか、360度どこから見ても美人だけどな! 360方美人っとこだな」

「スズちゃんは可愛いけど、先輩の愛は重すぎるよー」

あきらかにるいの気持ちが重すぎて、スズはうんざりしていると礼子も思う。

(もはや厄介オタクの推しですよね……)

と礼子は思う。

「おまえら、あたしのスズの写真フォルダ見る?」

「じゃあ、いちおう?」

るいはスマホの画面を二人に見せてくる。

「寝てるスズちゃん、これ勝手に撮ったの?」

「はあ? おまえ、寝てるスズを撮るのに許可とったら起きちゃうだろ? バカだなー」

「そういうことじゃなくて……。っていうか、360度とかって言ってたのに後ろばっかじゃん!」

「スズは後ろから見ても美人なの! 頭のシルエットとか肩のラインとかさあ?」

伊織の批判に、るいは反論する。

(わかります。……盗撮だから、後ろ向きの写真ばっかりなんですね、るいさん……。だって、私のフォルダも……)

少しるいの気持ちに共感した礼子だった。


おしまい

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気だるげな先輩と真面目な後輩がSS indo @nido1211

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