家族から追放された俺は絶望する。

夕日ゆうや

家族

「ただいま」

 その言葉がこの家の、家族の会話を遮った。

 俺は両親と妹を見やる。

「どうした?」

 俺が言葉を失っている家族を見やる。

「お前、誰だ!」

 怒り心頭に発する父。

「え。どうしたんだよ。父さん!」

「お前に父さんと言われる筋合いはない!」

 空手をやっていた父は俺の胸ぐらを掴みかかり、玄関まで押しやる。


 ――どうしてこうなった。


 俺は家族から追い出されると、困り果てたように周囲に視線を投げかける。

 父は冗談でもそんなことを言う人ではない。

 いったいどうしたのだろう。

「ジン、どうしたの?」

 同級生のサラが呼びかけてくる。

「俺の家族がおかしいんだ」

「それって、アオハルテクノロジーじゃない?」

 アオハルテクノロジー。

 それは青春を謳歌する人々に影響を与え現象だ。

 世界にいるあらゆる高校生がなり得る現象。

 それも科学技術が発展してきた結果と言えよう。

 世界中に散布された技術の結晶が、それを引き起こした。

 戦争のない世界へ。

 そのために散布された技術。

 人の心を操る技術。

 その結果がこれだ。

 家族から家族と認められなくなる技術――。


 俺は家族から見放された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

家族から追放された俺は絶望する。 夕日ゆうや @PT03wing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ