第7話 最終話
いくらお互いが想っていても決して繋がることはなかった。
「青木さん、俺の卒業アルバム書かしたるからな」強がる蓮の口調はいつものように上から目線だ。
もう明日で卒業だった。
残された時間はあとわずか。
小春は複雑な心中だった。
蓮を遠ざけたいと考えながらも本当は好きだった。
本当に蓮が心の底から愛しかった。しかし、それを上手に表現することは難しかった。
〝バイバイ サイテー男(嘘)〟
その短いメッセージを小春は蓮の卒業アルバムに書き残した。
好きの意味さえ小春はわかっていなかったかもしれない。バイバイと書いて遠ざけて、嘘と書いて胸の中にある本当の気持ちを表した。
恥ずかしさを隠すための嘘。やはり小春は蓮を避けた。
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卒業式当日。
「青木さん、俺のこと避けるなよ」ポンと小春の肩をたたいた。その言葉の意味とは対照的に蓮は笑顔だった。
小春は蓮に何も言えなかった。
それが2人が交わした最後の言葉となった。
きっと嘘に込めた意味を蓮は気付いていた。
(ただ、蓮の優しい感触だけが肩に残ったんだ…)
3月のほんのり冷たい風は蓮と小春の間を隔てるかのように吹き過ぎていった。透明な風は四階建ての校舎をすり抜けて、木々のあいだを通り、西の方角へ流れていた。雲はなく、青い空が広がっていた。女子生徒たちの長い髪がたなびき、揺れていた。
(もう二度と戻れなくても、今はただあなた、あなたのことばかり…)
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〜エピローグ〜
小春はワイングラスを傾け、最後のひと口を飲んだ。ワインのように記憶は内側に入っていった。
もう戻ることはできないあの頃をずっと抱いたまま。部屋に流れているビートルズの音楽は
しっとりと小春の想いに寄り添った。
そこでオーディオセットの停止ボタンを押した。部屋はしんと静かになった。物音ひとつしない、静寂の冷たい冬の世界。
小春はしばらく呆然と、その温かな記憶に心を寄せていたが、やがて首を振った。夜はいつの間にか、明けようとしていた。
太陽が新しい光をうっすらとした雲の向こう側から輝かせ、窓から入り込んでくる。そうっと、椅子から立ち上がった。
「バイバイ」と最後に、そう口に出して言った。その言葉は空中を漂い、細やかな粒子となって、立ち昇って消えていった。
ーーーーーーーーーーendーーーーーーーーーー
永遠の恋 愛菜 @ain67
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