第6話「強がり」
蓮は小春には弱みを見せなかった。プライドがあったのかもしれない。
それは本当に特別な女の子だったからかもしれない。
受験シーズン、蓮は学区内で1番偏差値の高い高校の特進クラスを受けた。もちろん蓮の学力を持ってすれば受かると誰もが信じていた。
しかし、蓮は特進クラスに落ちてしまった。蓮は自信を打ち砕かれたし、とても残念だった。だけど、小春には落ち込んだ姿を見せたくなかった。蓮は決して落ち込んでいると小春に悟られたくなかったのだ。
だけど、そんなことはわかりやすすぎて、小春は全てを見抜いていた。
「青木さん」いつものように蓮は小春の席に行き小春の肩をたたいた。そして、蓮は笑った。その笑顔は妙に明るい。
蓮の無理する笑顔。小春はいつものように平常心で対応するように心掛けた。
2人ともきっとわかっている。わかっていた。
蓮の笑顔と小春のいつも通りの対応が、お互いがお互いを思っていた瞬間だった。そうに違いない。
(無理する笑顔を見てると胸が苦しくて…
強がってるって
そんなの簡単にわかるよ…)
胸の傷みが蓮をどれだけ想っているか伝えている。
小春も小春で落ち込んでる蓮に何も言ってあげられないのが悔しかった。
小春は蓮の力になれない無力さをこのときに痛感した。
(何も言えなかった…
永瀬蓮はいつも話しかけてくれるのに
こんな時くらい こんな時こそ
私から声をかけてあげたかったな…)
思い掛けず溢れそうになった悔し涙を小春はグッとこらえた。しかし、涙はうっすらと目の表面を覆っていた。小春は目で涙をこすった。
小春の胸には果てのない強い痛みが、まるで真夜中の獰猛な肉食獣のように激しく呼吸をしていた。小春の抱いているものは鋭い痛みを伴った二人の絆の証だった。
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