第5話「相反する行動」
「俺で男に慣れたらいいやん」というセリフは、どういう意味かも結局最後まで訊き出すことができず、頭の中でいつもリフレインしていた。
「バイバイ 青木さん」蓮は小春に手を振る。
小春はうまく声が出なかった。どう接して良いのか分からなくなっていたからだ。
無視をした形になった。隣にいた薫が代わりに蓮に手を振った。
それを見ていた静香が「小春は蓮と付き合いなよ」と嫌味を込めて言ってきた。
小春はそれが嫌だった。蓮の気持ちは1番小春がわかっていたかもしれないのに…
小春は次の日、薫や静香、愛菜に言った。
「私、東口くんがかっこいいと思うんだよねー」
東口くんとは隣のクラスの美男子だ。ホストクラブ系の容姿だった。小春は東口くんの名前を上げることで友達のマークを逸らそうとした。
相反する行動。蓮は見抜いてたのかもしれない。
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思いがけない告白から、小春は蓮を極端に避けるようになった。
それでも蓮は小春のところに行く。
「青木さん」と声をかけれそうになると、小春は足早に逃げる毎日だった。
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家庭科の調理実習の時間にそのアクシデントは起きた。
小春の班の西村優太が休んでいたのだが、家庭科の先生が誰か小春の班に1人入ってくれないかと言った。
すかさず蓮が手を挙げた。小春は動揺した。
蓮は小春の向かいに座った。小春は目をそらした。
実習が始まりエプロンをつける。
蓮が「青木さん」と、エプロンの裾が指まで来ている腕を出す。
小春は蓮のエプロンの裾をめくって腕まくりをさせた。嫌だと思いながらも嬉しかったのだと思う。
周囲から見たらこの2人はいったいどう映るのだろうか。
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その頃、蓮が薫のことが好きだという噂が流れる。
小春は心をなで下ろした。周りの嫉妬から逃れられると思ったからだ。
だけど、本当は気になっていたかもしれない。小春は愛菜に頼んで訊いてもらうことにした。
美術の時間、やはり蓮は小春のところに来た。愛菜が割って入る。
「永瀬くん薫のこと好きなん?」
「なんでやねん」蓮は明るく言った。
真相は不明だ。小春は気になって仕方がない。ただ、小春にできることは愛菜に訊いてもらうぐらいしかなかった。
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