第4話 フィルター
メモ帳を拾った私たちは中身を確認するため近くの図書館に入り込んだ。
図書館内に人はおらず無人の中、蔵書を検索する機械だけが動いていた、私たちは煙がまだ多く入っていない奥の従業員部屋まで向かった。
ここ倦厭街の図書館は色々な本が蔵書されているのにも関わらず、治安が悪すぎるせいかほとんど不良のたまり場になっていたのであまり来たことはなかった。
(ここが図書館の裏側なんですね、来たことも働いたことすらなかったんで分からなかったですけど、こんな風になってるんですね)
図書館の裏側には様々な本と、本が傷ついたら直すための道具がそろっていた、中には工具が入っている工具箱もある、いったい何に使うんだろう。
「朱莉さん!こっちです」
金治が示したのは検索機だった、「これで、ティンダロスの猟犬ついて調べてみましょう、何かわかるかもしれませんし」
相方がキーボードでティンダロスの猟犬と打ち込むと一件だけヒットした、画面にはクトゥルフ神話と表示されていた。
(クトゥルフ神話?聞いたことない名前の本ですね、一個しかないってことはそんなに有名じゃないんでしょうか)
ふと金治の方を見ると、金治は顔が青ざめ汗をかき手が震え、歯が{ガチガチ}と音を鳴らしていた。
(金治さん?どうかしたんですか?震えてますが)
「あ、大丈夫、大丈夫だ、問題ないから」そう言うと手を力強く何かを決心したのか、かたい握りこぶしを作って震えを止めた。
私はそれを見て気を紛らわせるために機体の電源を切り、本があったと表示されていた場所に向かった、書いてあった場所には幅の大きな本が何冊もあり。
奇麗に整頓されている、その中に英文体でクトゥルフ神話と書かれている本が一冊だけ置いていた。
本を本棚から出すと、{ズシリ}と辞書より相当重く、相方のところに持っていくにも一苦労だなと思いながら、腰に力を入れ本を持っていく。
(金治さん、持ってきましたよ、はい)そう私が言うと、本を机の上に置いて私は息を吐いて相方にそう伝えた。
「ありがとうございます、じゃあ見ましょうか」そう言うと本を開き目次を確認する、そこには色々なキャラの名前が陳列されており、その中にティンダロスの猟犬と書いてある目次を見つけた。
ページを合わせるとこう書いてあった。
螺旋状の塔が建ち並ぶ悪夢の具現化のような都市「ティンダロス」に住まう不死生物で、作中の人物の発言から「ティンダロスの猟犬め」と呼ばれているが、犬ではなく人間に近い知的生命体である。また、人間のように個体名を持っている事も確認されている。獲物を狩るために知恵を凝らし、他の種族との協力も惜しまない存在である。
出現するときは鋭角から煙が吹き出し、悪臭とともに頭から徐々に実体化する。この臭いは凝縮された不浄の匂いそのもので、近づいただけでも鼻をつままなければ行動もままならないほどにひどい。
時間が生まれる以前に行われた、口にする事も憚られるおぞましく怖ろしい行為によって産み落とされ、清浄と不浄のうち不浄を体現する存在となったとされる。
全ての「不浄」を受け入れる実体となったため、汚れなくあらわれた「清浄」なものに飢えている。人間はその原初の「行為」とは関係のない部分を持っているとされ、それを憎んでいるという。
猟犬たちの領域にあるのは不浄だけで、人間の感覚で理解できる思考も倫理道徳も存在しない。
人間および他の普通の生き物が「曲線」を祖先としているのとは異なり、「角度」を祖先としているのだとされる。人間とその世界は清浄を起源とするため、湾曲を通して顕現するが、ティンダロスの猟犬は不浄を起源とするために角度を通って顕現する。我々が真の意味では直線の要素を持つ事ができないのと同じように、彼らは曲線の要素を持っていないのかもしれない。この概念は非常に難しく、ティンダロスに棲む者達に関してのみ適用される概念である。
人間などの普通の生物が時間に干渉すると、彼らの領域に踏み込む事になるので、ほぼ確実に察知されてしまう。彼らは時間の中を行き来する者、そして自分の注意を引いた者を追いかける。
常に飢え、非常に執念深い性格である。彼らは人間および他の普通の生物が持つ、自分達が持たない「何か」を追い求め、時空を超えて犠牲者を追いかける。
清浄を起源とする曲線の時間の生き物を激しく憎悪し、一度目を付けると執拗に追い立てる。時間遡行などの行為はティンダロスの猟犬の目にとまりやすいが、それ以外にも過去視や未来視によっても発見されるリスクがある。
私たちはそれを見るとゾッとしたのと同時に謎が思い浮かんだ、1個目に犬ではないということ、ではあの時現れたのは何なのか。
2個目に湾曲を通して顕現すると書いてあるが、湾曲なんてものは街中を見たが特になかった、ではどこから現れたのか。
そして最後、3個目に{何か}を追い求めている、それがいったい何なのかという3つの謎である。
(どう思います、これ?)私は本に書いてある空想の怪物が実在している、そんな状況を理解していると口には出せても頭の中では否定していた。
金治も同じなのか、同じように理解できていないんじゃないかと思い、軽く聞いた時、彼の顔は片手で押さえ顔の全部が見えないながらも口元が笑っているように見えた。
「あ、ああ、そうだねこれはこの本の通りかもしれない、こんな空想上の生物がいるなんてありえないことだが」
そう言葉を口にしたときには顔から今さっきの笑みはなく、真剣な表情で答えていた、私にはそれがとてつもなく恐ろしく見えてしまった。
「もう一度病院に向かいませんか?今なら院長に会って何が起きたのかゆっくり聞けるかもしれない、それにあの人たちの安否も心配ですし」
この人のことは分からない今さっき知り合って信頼できるかどうかも分からないがこの事象を解決するためには協力しなくてはいけない。
(わかりました病院に行ってみましょう、あの人たちが無事であると良いんですけど)
そう言って今さっき来た道を少し小走りで不安な気持ちを飲み込んで向かった。
タバコとココアシガレット @kuonngatari
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