第3話 刻(きざみ)

 病院に着くと慌ただしく何人かのナース服を着た人たちが病院内の病室を行き来しており緊迫している状態だった、

 周りを見渡せば部屋に入りきれず廊下でうなだれている大勢の人達も見受けられる、そんな中自分達が正面入り口から入ってきたのを一人のナースが見ると

 大声で「早く扉を閉めて!早く!」と叫んだ、(あ、はい!分かりました!)私はそう言うと、中に急いで入り正面玄関の扉を閉めた。

「あなたたちは大丈夫?外に何分いたの?吐き気は?視界はぐらついてない?」

(いえ、私たちも外にどのくらいいたか分からなくて、体調は大丈夫なんですけど周りの人たちって大丈夫なんですか?)

「見ての通りよ、外の空気を吸いすぎると肺から炎症を起こして意識が混濁していくの、そして四肢も動かなくなって最後には何かに連れ去られるの」

 そこまで吸いすぎるとまずかったなんて知らなかった、私たちはどのくらい外にいたか細かくは分からないから、今自分たちの症状がどれほどのものなのか不安になってくる

 (その何かってどういう見た目をしてるんですか?)

「見た目、見た目は犬みたいだったけど普通の犬じゃなくて体から黒い煙を出してるみたいだったわ」

 犬、てことは夢で見たあの犬は今の状況を起こしてる元凶ってことだろうか、じゃ一体あの長身の男性は?何か関係があるんだろうか。

{ピリリリッ}奥の部屋でチャイムのようなものが鳴った。

「ごめんなさいね、もっと質問に答えてあげたいけどこっちもこっちで忙しいの診察してもらうならそこの椅子に座って待ってて」

 そういうと看護師さんは奥の部屋に急いでいった。

 市ヶ谷朱莉(どうします?もっと詳しい情報を知るならこのまま待っとくほうがいいみたいですけど)

 伊馬奈金治(そうだね自分たちがどこまで症状が出でいるかわからないし待って診察を受けたほうがいいかもだね)

 {複数の悲鳴}外から悲鳴が聞こえたそれも複数、今さっきの看護師さんの説明があってるんだったら煙を吸い続けて時間が経ったんだ、私たちは外を扉の隙間から隠し見ると。

 そこには鋭い牙を見せ、明らかに人よりでかいその体から黒い煙を全体から出し、道路の真ん中で震えて動けていない人に襲い掛かろうとしているところだった。

「助けて!嫌だ!来るな!こっちにくるなぁ!」

 その言葉に反するように獣は、動けない人に近づくと鋭い牙をむき出しにし腹部辺りを横から噛みつき咥えた。

 嚙みつかれた人は牙が刺さったところから血が滲み苦悶の表情をあらわにしている、そのまま獣は人を咥えたまま煙の中に消えていった。

 あたりには抵抗していたのか血が飛び散り、凄惨な状況だった。

 朱莉(あれが例の獣、問題はあれに対抗する方法が今のところ思いつかないこと、体から黒い煙を出してる時点でこの世の生物じゃない気がするんだけど)

 金治(確かに見た感じ、人より大きく体から黒い煙を発して成人が抵抗してもビクともしない強さを持ってますから、捕まったら終わりですね)

 もう一度今さっき人が連れていかれたところを見ると、一個のメモ帳があった、いまさっきの人が持っていたのだろうか。

 拾い上げると、メモ帳にはティンダロスの猟犬について、と書かれていた。

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