第17話異世界から呼んだ理由それだけなんですね

目の前には辺り一面の白い空間。


突然現れた女性。




ルイーダさんにアンドラさん、それにロン君に優斗さんに私を入れて、五人も一緒にいた。




みんなこれは何事かと辺りをキョロキョロしている。




とっても綺麗で神秘的な女性が、突然私に話しかけてきたのだった。




「やあ、中々楽しんでいるみたいじゃないかい」




「えっと……どちら様でしょう?」




「ああ、名乗りもせずにすまないね。私は女神リリア。君からしたら私は異世界の神といったところかな」




「え!? いやいや、神様だなんてとてもじゃないですけど信じられませんよ」




「そうかい? そうだな……。君が日本で社畜生活を送りながら”癒し”が欲しいと言っていたから、こっちの世界に来られるようにしたと言っても信じないかい?」




「そんなまさか……。確かにそんなエスパーみたいなことを知っているということは、貴方が神様だってことなのかもですね……」




「話しがはやくて助かるよ」




ロン君が驚いた声を上げながらこう言った。




「え? 女神リリア様だって!? ウソだろ?」




「ロン君知っているの?」




「知ってるも何も、リリア様って言ったら豊穣を司る神様で、またの名をグルメの神とも呼ばれている超有名人だよ。まさか本当に実在しているなんて……」


 


ロン君、この状況を飲み込むの早いわね……。


普通こんな事態になったら、もっとパニックになっても良いだろうに。


まあ、それを言ったら私もか。




「リリア様お久しゅうございますな」




アンドラさんが恭しい感じで頭を下げていた。




「リリア様お久しぶりです! 本当に何百年ぶりでしょうか」




ルイーダさんが興奮した面持ちでいる。




「二人ともお久しぶりですね。人間の前にこうして姿を現わすのは、ざっと二百年ぶりくらいでしょうか」




なんか凄い話をしているっぽいけどダメだ。


会話が異次元過ぎてついていけないわ。




「それで、僕たちをここに呼んだのはリリア様なんですよね? 何か僕たちに用事があって呼んだのではないですか?」




優斗さん凄い冷静。


でもそうよね。


そもそも優斗さんと私が、今までこっちの異世界にこれていられたのは、リリア様の力があったからと言われれば納得だもんね。




「はい。実はシズクとユウトの二人には、やってもらいたことがあるのです。それをやってもらうためにこの異界の地に来れるようにしたと言っても過言ではありません」




「なるほど。それでやってもらいたいこととは?」




リリア様が一瞬恥ずかしそうにしてからこう言った。




「そ、その、あなたたち二人の世界の美味しい食べ物を、こっちの世界でももっと食べられるように、色んな料理をこちらにもたらしてほしいのです!」




「……。それは良いですけど、何故ですか? もっとこうなんか、この世界のためになることをやって欲しいとか、そういことなんだと思ってたんですけど」




「それは……未知の料理の味を楽しみたいから……です」 




……。


さすがは豊穣の神様、いやグルメの神様ね。


ようするに、自分が美味しい料理を食べたいから、異世界人の力を借りることで私たちの世界の料理を食べたいということか。










「ぷはははっ! リリア様らしいですな」




アンドラさんの甲高い笑い声。




「本当相変わらずのようですねリリア様は。ふふふ」




ルイーダさんまで小さく笑っている。




「リリア様のそういう気まぐれで、今まで何人もの異世界人たちが、次元を超えてこちらの世界にやってきたものですな」




アンドラさんが何かを懐かしむように顔をほころばせる。




「そうだったわね」




ルイーダさんも同じなようです。




「え? 私たち以外にもこっちの世界に来ていた人がいたんですか?」




私は思わず驚いた声を上げた。




「うむ、そうなのじゃ。確か、楽に移動出来るようになりたいから、異世界から車技師とかいう者を呼んだこともあったかのう」




「ああ、あったあった。懐かしいわねー」




アンドラさんとルイーダさんの二人が昔話で盛り上がっている。




「リリア様一体何しているんですか……」




なんか落胆したような気持ちだ。




「いやー、ねえ、だって楽に移動出来るようになったら皆も便利かなーって……てへっ!」




リリア様がそうやってはぐらかした。


まったく、てへっじゃないですよ。




「つうかさシズクさんとユウトさんの二人は異世界人だったの?」




ロン君がそう聞いてきた。




「ああ、そうなのよ。今まで隠しててごめんね」




「いや、それは別に良いんだけどさ。俺も前にルイーダ師匠から聞いた事があったから。時々異世界から人が来ることがあるんだってね」




「へえ、そうなんだね」




「我は最初から、お主らが異世界人であることは気付いていたぞい」




「あ、アタシも分かっていたよー」




アンドラさんとルイーダさんが何か自慢げだ。




「ああ、もしかして前に”シズクはそう”だからって言ってたのってこういう事だったんですか?」




「うむ、そうじゃ」




「そういうことー」




「なんだ。じゃあ最初から二人にはバレてたんですね」




優斗さんが力が抜けたようにそう言った。




「そうだった。あまりここに長居させる訳にもいかないから、そろそろみんなを戻すね。こっちから呼んどいて悪いんだけどね。みんなに会いたくてつい呼んじゃったよ」




「いえ、こちらこそ会えて良かったです」




「あ、そうだ。最後に一つだけ言い忘れてたことがあったわ。ねえシズク、ユウト」




「はい? 何でしょうか?」優斗さんと二人同時に返事をした。




「そのうち二人には”ある選択”をしてもらおうと思うの。それは今はまだ敢えて明かさないけれど、時期がきたら教えるわね」




「はあ……? 分かりました」また優斗さんとハモった。




「うん。じゃあね。またそのうちに会いましょうね――」




リリア様がそう言うと同時に強い眠気に襲われた。


他のみんなもバタっという感じで眠りに入ったのだった……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

社畜さん、異世界を行き来してスローライフ @koketsutarou2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ