第6話 第5城郭、そして金色のパラディン

 カステトとニテはその声を耳にすると急いで5城郭の城門に向かい走り出した。しかし、小人族ゴブリンは狼や猪にのっていて人間の走りでどうにかなるもんじゃなかった。疾走してくるゴブリンたちにクララ平原で畑仕事のため来ていた農民たちは阿鼻叫喚になりあちらこちらで叫びながら足を動いた。探索者たちにより王都近くのゴブリンは退治されているはずなのにどこから湧いたのかその数は歩兵を含み約50を超えるようだった。既に何人かの農民はライダーにより犠牲になり追いかけてくる歩兵によって始末されるのであった。十数人の農民しかまだ畑に出てなく彼ら皆城門に向かい走るものだったが、ライダーゴブリンの追撃により後にカステトとニテを含む7人の男性は逃げきれず残酷なモンスターによって囲まれた。


 お互い背中を任せ仕方なく農機具を手に持ち戦おうとし、ニテも腰につけていたブロードソードを鞘から取り出し戦う決意をする。


(くそ、なんでこんなところにゴブリンが来てるんだそれもライダーなんて。探索者たちが討伐しているはずだからしばらくは大丈夫なはずだったろ。適当な仕事しやがって狩りつくしてねーじゃん。兵士たちが救援に来るはずもないかこれは…完成されてない5城郭を開くわけにはいかないからな)


 戦力差も酷く訓練は受けていたが結局農民ラニー以外のまともなモンスターと戦った経験がない彼らはただ怯えることしかできなかった。


小人族ゴブリンか、歪な姿をした人間…に近い生き物。汚く目や鼻の位置がずれているだけの子供のような人間…だからこのモンスターに犯されるとゴブリンを産んでしまうのか)


 ニテはグルルと人間の言葉を話さず襲う準備をしているモンスターをそう考察するのであった。彼が王国図書館で見た本では堕落人種がさらに堕落し続けて奈落に落ちた存在、それが小人族ゴブリンであった。


「ギギギッ!」


「ゴウクア!」


 人族の一種といったもののちゃんとした言葉はなく何の意味か全く分からない獣みたいな叫ぶ言葉で会話をし始めた。きっと農民たちをどう殺すかの話だろとニテは思う。観察していたゴブリンたちは歩兵たちが合流すると囲んでいた範囲を迫って直に戦闘が始まる。


「グアオ!」


 猪や狼に乗っていたゴブリンたちは攻撃せず体力が落ちているはずの歩兵のゴブリンたちが攻撃をする。ゴブリンもまた人族みたく戦闘を楽しむという文化があるのか襲い掛かるゴブリンに剣を振りながらニテはそう思うのであった。


(くそが、観戦とかもするのかよ!死ね!)


 彼が振り下ろしたブロードソードに一匹目が頭蓋が破れるがその剣もまた固い頭蓋のせいですぐに抜けず他の人によって守られる構図となった。


「死んでたまるか」


「そうだ、思ったよりよええじゃん」


 農具で何体か倒し始めると自信感が芽生えたか若者たちが興奮し大声でそう叫ぶのであった。ニテは守られたことには感謝していたが剣を抜きながら観察した猪のゴブリンが彼らの言葉に反応する姿を見て背中から電流が流れるような殺気を感じ腰が抜けそうになった。


 ゴブリン歩兵が11体ほど倒されるとその隊長に見えしきゴブリンは血が頭に上ったのか


「グアアアアア!」


 と叫ぶ瞬間ニテの目では追いかけられない跳躍で棍棒を振りゴブリンが弱いと言った青年の頭を潰したのであった。


「ワ・レ・ワ・レ・ハ・ヨ・ワ・ク・ナ・イ」


 脳みそと血で汚されている棍棒を手に取ったままそのゴブリンははっきりとそういうのであった。


(人間の言葉を理解し使うこともできるのか、やばい全然反応できなかった…これは絶対死ぬな)


 頭を潰された青年の隣にいた男は尻を地面に落とし四つん這いになりその場から離れようとしたが、モンスターに背中を見せるというのは死を意味していて棍棒のゴブリンが彼の背中を踏みにじりそのまま棍棒を振り下ろしてその力だけで頭から首まで全部砕け芝生に血が散らされた。


 残り3人組と2人組の彼らにはもう戦える余力もなく、勢いが消え歩兵たちにも押され始める。戦闘が始まって7分くらいすぎたかやがて攻めに絶えず疲れ切った農民たちを目にしたゴブリンの部隊は賭け事をして誰が誰を殺すのかを話すようでクスクスニヤニヤして残酷な顔をしていた。


 そうふざけているゴブリンの頭を拳で殴り彼らの前に棍棒のゴブリンが立つ。


「ニテ、役に立たない私が肉盾になる、他の者たちと一点突破して逃げろ。慢心しているこいつらが乗物から降りている今がチャンスだ」


 カステトの声がニテの後ろから聞こえてきた。これでも戦闘が苦手な父を守り戦いかすり傷が結構増えている彼を生きて欲しいと願う愚かな親の心だろう。


「そんなんぜってー無理だぜ」


 ニテは父の作戦も運が良ければいや、この棍棒のゴブリンさえいなければいけるとは知っていた。しかし、この鋭い化け物から逃げられるとはどう考えてもイメージできないものだった。


(ここまでか、なんも成し遂げないまま終わり…くっだらね)


 人生の最後を感じ目を閉じて死を待つ


くちゃっ!


「ん?」


 そう絶望している彼の耳に変な音がして目を開くとどこからか飛んできた銀色の鉄製のメイスにより棍棒のゴブリンの頭が飛ばされていた。


「ははっ、これはいったい…」

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転生公爵令嬢は悪を滅ぼす聖なる乙女となる 萩の花 @haginohana1313

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