第4話 記号に流行必要ですか!?

「はいチーズ!」


写真を撮るときのこの言葉、

柚紀(ユズキ)は最近なぜか言えないでいる。


(これは...もう時代遅れかのだろうか...)

と迷いがあるからだ。




久々に、学生時代の友人達と飲みに行くことになった。社会人になっても金銭感覚が変わることのない3人なので、格安の居酒屋だ。


丸いテーブルに三角形を作るように座り、それぞれ飲み物を注文する。

「ウーロン茶3つ!」

飲みに来たのに一発目ノンアルコールを頼むのもいつもの通りだ。


年齢を感じるだの、身体が痛いだの、職場にいる気の合わない上司だの...学生の時とは会話の内容が変わってはくるが賑やかなのには変わりない。


話しに夢中で、次々とコースででてくる料理を処理しきれず、テーブルがいっぱいになってしまった。あわてて取り分け、皿を空けるのもいつもの様子だ。


たわいのない会話を永遠と繰り出しながら女子会のお喋りは止まらない。切り上げのタイミングは3時間コースのオーダーストップだ。

だいたいこのメンバーはお茶漬けで締める。


店の外に出ると、お酒でいい気分になった大人達が楽しそうに道を埋め尽くしていた。

それでも柚紀たちは、実は5時頃から飲んでいたのでまだ20時だ。


数杯のカクテルを飲んでいた友人の一人が

「ねぇ、久々にプリクラ撮ろうよ!」

と言い出した。

「え、私何年も撮ってないから今の全然分かんないんだけど」

と柚紀は言ったが

「いいね!撮ろう撮ろう!」

ともう一人の友人もノリノリだったため、そのままゲームセンターのプリクラコーナーに足を運んだ。


「なんだこの整いすぎた設備は...」

化粧直しが出来るように(今はメイクというのか...)ドレッサー的なものがならび、なんならヘアアイロンまで。

コスプレグッズもとてつもないレパートリーだ。


「時代をワープしたみたいだ...」

という友人の言葉におもいっきり頷いた。


とりあえず一番入り口に近いやつで撮ろうかと、撮影スペースに入った。

どこかの女優専用スペースかというくらいライトが光っている。


もちろんポーズなんてのは、何もしないかピースサイン。

と、いうことでアナウンスに合わせてみることにした。


“次、指ハートいくよ♪”


可愛いアナウンスで指定される。

“3.2.1”パシャ


に合わせて指ハートを作る。

(何だ指ハートって・・・)


お手本に合わせて見よう見まねでやってみる。


全部撮り終わり、次は落書きコーナーだ。


ペンは2本しかないので柚紀は2人に任せてブースの外で待っていた。

すると、中からゲラゲラ爆笑の声と共に

「柚紀!!!」

と呼ばれた。


中に入ると問題の【指ハート】写真だ。

「柚紀だけ違う!これハートじゃなくて○ッチキチーだし!」


大ベテランの芸人さんのギャグ(?)を出され

(私の親以上世代だと思うのだが・・・)

画面をのぞき込んだ。


「まさに・・・」

1人だけ現代について行けてない感満載のポーズをしながら、顔面だけは最新技術で今時の顔に修正されている。

なんともおかしすぎる雰囲気だ。


3人で時間いっぱい爆笑し、その後パフェを食べて解散した。




このプリクラ、数年後もネタにされることになるなんて柚紀は思いもしていない・・・










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イマドキ!流行!に付いていけないとダメですか?~令和の20代 アナログ柚紀(ユズキ)の生活。~ ペンサキ(先)。 @pensaki-202312

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