第14話


 窓越しに過ぎていく景色は、発車した方面とは反対側の場所にあった。


 高校に向かう方角を走っていたのは、間違いなかった。


 ほんのさっきまではそうだったんだ。


 教習所の5階建ての建物と、赤い河川橋。


 山間の道を進んで、電信柱の影が濃くなっていく。


 斜面の下に流れていく草原。


 白く降り積もった陽射し。


 最初のトンネルを抜けて、山がどっと近くなった。


 トンネルの先に広がる山間の景色は、大都会の街並みよりも少しだけ、騒がしかった。



 一斉に降る蝉時雨。


 ジリジリと立ち上がる陽炎。


 広い川向こうに聳える大倉山の山肌が、何色もの色を織り交ぜたような鮮やかな緑を携えていた。



 間違いなかった。


 いつもの「道」だった。


 『川茂駅』は、あの道の先には無い。


 真反対なんだ。


 さっきまでいた「場所」とは。

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