第11話



 「この電車は、どこに?」



 そう尋ねたのは、電車の行き先を知りたかったからじゃない。


 ただ、聞きたかった。


 自然と言葉に出た。


 駅員さんは答えた。



 「「どこ」に続いているかは、誰にもわかりません。ただ、彼が、——あなたが行きたいと思う「場所」が、もしかしたら」



 私が行きたいと思う場所。


 抑えきれない気持ち。



 彼に、——大輝に、会える?



 バカみたいだな…



 って、思った。


 だってそうでしょ?


 葬儀場から抜け出して、わけもわからず駅のホームのベンチに座り、こうして、見知らぬ誰かと話をしてる。


 そんな奇妙で、ありふれないに日常のそばで、「大輝に会える」って、——そんなふうに思えることが、どこか、無性に。



 「まさか、夢でも見てます?」


 「さあ、それはどうでしょう」



 駅員さんの声は優しくて、それでいてずっと冷たくて。


 まるで雨上がりの景色みたいに、清々しいほど晴れやかだった。


 穏やかな風の流れが、物静かな駅のホームで鳴いている。


 太陽は東へ傾いていた。


 空を切り裂くひこうき雲が、窓越しの向こうに伸びていて。


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