第10話




 まもなく 3番のりばに 電車がまいります。 危ないですから 黄色い点字ブロックまで お下がり下さい。





 誰も乗っていない電車。


 見たこともない機体。


 運転手はいなかった。


 電車を降りる人も、行き先の「表示」も——




 どうされますか?




 駅員さんの声が、耳の奥へと響いた。



 どうする…か…?



 ホームに停まった電車が、プシューッという音を立てる。


 スライドするドア。


 色褪せた、紺色のバケットシート。



 どこかに行きたくて、この場所に来た。


 自然と足が向いたんだ。


 改札口を通ったことも。


 急いで階段を登ったことも。



 自分が今何をしてるのか、どこに行きたいか。



 はっきりしてるわけじゃないんだ。


 ——何もかも。



 ただ気がついたらここにいて、どこかに行こうとしてる。


 「行き先」なんてどこでもよかった。


 どこか遠くへ行きたかった。


 …だけど



 

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