第9話


 「風はいつ吹くか、ご存知ですか?」


 「はい?」


 「不思議に感じたことはありませんか?どこから、「風」はやってくるのか」



 …そんなこと言われてもわからなかった。


 風?


 考えたことないよ。


 そんなこと。



 「もしかしたらもう、彼には会えないかもしれません。しかしこうして「風」は吹いています。3番線の電車が来るように」



 …へ?



 アナウンスは鳴っていない。


 それは奇妙なほどに唐突だった。


 街の向こうで微かな音が聞こえる。


 まっすぐ伸びた線路と、空と。



 ガタンゴトンとゆらめく陽炎が、果てしないレールの向こうに流れていた。


 線路脇に整列する電信柱が、草むらの緑をかき分け。


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