俺たちの戦いはこれからだ!
「…さい、…うた」
「めざめ…い…、ゆ…た」
「目覚めなさい、ユウタ」
意識の遠くの方から聞こえてきた、優しくも温かみのある声に瞼が反応した。
「う、うぅん?」
「ようやく目覚めましたね、ユウタ」
ぼやけていた視界の中には、美しい女性の輪郭が…いや、コイツは…
「お前、また転移させたな」
「おほほ。さぁ、気合い入れてこの世界も救い出しますよ!」
憎たらしく高貴な話し方をしている女神の姿は、前回の世界の時よりもやや装飾が増えているようであった。
「ユウタのお陰で新しい衣装も得られましたし、本当に感謝しているのですよ。これで私も、『女神見習い』から『中級女神候補補佐』になることができました」
「なんか、古臭い会社の役職みたいだな…」
突然この女神が俺のことを呼び捨てになっているのは一旦無視するとして、俺はこの世界での冒険は絶対に納得の行く物語にしようと考えていた。
元の世界で成し得ることができなかった映画監督の夢、みんなに馬鹿にされた俺の夢を、この世界でリベンジしてやると決めた…というのは割と口実で、とにかくこの悪魔の暴走を止めなければと思っていた。
そう思っていたはずなのだが…
「貴様、何者だ!」
俺の目の前にはどう見ても魔王っぽい意匠の大柄な男が立っていた。
「わぁ! なんと、今回はいきなり魔王戦からスタートですね! さ、気合入れて参りましょう!」
女神は白々しくそう言うと、俺の顔を見て悪魔のような笑みを見せる。
「お前! 選んだだろ! もう攻略されかけている世界を選んだだろ!」
もう攻略されかけている世界と感じた理由は二つ。魔王が既にボロボロであることと、周囲に勇者一行のような者たちが倒れているのが目に入ったからだ。
「貴様が何者であろうと、殺すまでだ!」
「ま、まて! 俺たちに戦う理由なんてない! その理由から一緒に作っていこう!」
「理由など不要!」
魔王はそう叫ぶと、自身の姿を霧に変化させた。
「ふははは、これが私の奥の手、『
「きゃー! きゃー! ユウタ! ほら、ピンチですよ! やばーい!」
女神がわざとらしくピンチを演出する。そして、彼の能力に呼応するように俺の身体が…
もうこれ以上説明は不要だよな。
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こうして俺の二回目の異世界生活は終了した。
…きっと俺の戦いはこれからだ!
主人公補正がかかり過ぎてて一瞬で冒険終了 Fa1(ふぁいち) @Fa1
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