異世界転生系勇者の俺、人々を苦しめる魔王を倒そうとするも魔王がか弱すぎてやり辛い

タカ 536号機

悲報 魔王倒せるけど倒せない件


「ククッ、よくぞここまで来たな勇者よ」


 あまりに突然すぎるかもしれないがクライマックスである。

 俺こと雨宮あまみや かける(ハムスター大好き)がトラックに轢かれ目を覚ますと、女神を名乗る人物に「チート能力与えといたから適当に世界救ってきてちょ☆。そしたら、君を元いた世界に返してあげる」と言われ、見知らぬ大地へと放り出されて早1年。


 右も左も分からず、とりあえず進み続ける中で魔物に襲われていた村をなんやかんや救いこの世界をどうやら魔王が支配しているっぽいことを知り、現れた魔王四天王を名乗る5人衆をぶっ倒したり、王様と会いこの世界の命運を託されたり、伝説のエクヌカリバーなるものを妖精を名乗る空飛ぶおっさんに突然説明もなく渡されたり、裏四天王を名乗る12人衆をこれまたぶっ倒し、ようやく俺はここまで辿り着いたのだった。


 そして今俺の目の前には赤いマントを全身に纏い周りには黒く異質な魔力が溢れさせ、見た目とは裏腹に何故かちょっと可愛らしい声で高笑いをする魔王がいた。

 声こそ想像と違うものの今まで戦った奴らとは比にならないほどの圧迫感と緊張感がビリビリと伝わってくる。

 とはいえ、ぶっちゃけ女神様から貰ったチート能力が本当にチートすぎてこれまで全く苦戦してないし、負ける気もしないが...なにせ相手は魔王だからな。油断は禁物だろう。


 さてと早く倒して前の世界に戻りたいところだが、おっぱじめる前にこれだけはやっておかないとな。


「魔王! 俺は今日お前を倒してこの世界を救う」


 くぅやっぱ、魔王戦前つったらこれよな! 俺も普段は冷静なキャラだけど男だからな。こういうのはテンション上がっちまう。


「...では、貴様に見せてやろう。真なる絶望というものをなっ!」


 そして、魔王もそれに応えるように迫力満点リアクションをくれる。分かってんね〜。


「「いざっ」」


 そして、その直後俺と魔王はお互いに剣を抜くと剣を真正面からぶつけ合う。


「なっ!?」


 そしてその瞬間に相対あいたいする魔王から驚いたような声が漏れた。対する俺はと言えばニヤリと笑みを浮かべていた。

 最初の衝突で分かった。これはいける。

 とはいえ、今までの敵は大抵最初のぶつかり合いで倒せたのでそう考えれば魔王は流石魔王といったところなのだろうが...。


「人間風情がぁっ、何故こんな力を持っておるっ」

「悪いな、俺にはちょっとズルイ力があるもんでね」


 俺はそう言い終えると力のままに剣を押し合いを制し魔王を吹き飛ばす。ちょっと心配な気持ちもあったがこの分なら余裕そうだな。

 この調子ならまず負けることはないだろう。


「ぐぅぅぅ、何故、何故、こんな奴にっ」

「んっ?」


 しかし、俺は再び目の前に姿を現した魔王に俺は動揺を隠せなかった。魔王が立ち上がるのは全く問題はない。最初なので様子見はしたし、相手は魔王なのだ。そこまですぐには倒せないのは分かっていた。

 だが、問題は容姿である。どうやら、さっき俺が吹き飛ばした時にマントが取れたらしくまるで見た目が変わっていた。というのも、


「お、女の子?」

「なんじゃ?」


 そこには俺の元いた世界なら中学生くらいであろう少女(?)がいたのだ。えっ、俺今からこの子倒すの?

 何をしてるんだ、普通に攻撃しろよと思う方もいるかも知れないが冷静に考えて見て欲しい。俺が今まで戦ってきた奴らは見るからにモンスターといった見た目ばっかりだったんだ。

 いきなりこんな女の子倒せ言われても無理、無理、絶対無理である。


「急にどうした?」

「うーわ」


 しかも、なんか包帯巻いてるし。よく見たら体のあちこちに痣とかあるし。やり辛っ! なんでこんなやり辛い容姿してるわけ!? 完全に家とかで虐待されてる系の女の子の見た目じゃねえかっ。

 倒しにくいことこの上ねぇっ。


「い、いや、落ち着け。相手は魔王。魔王なんだぞ」

「本当にどうしたのだ?」


 俺は自分に言い聞かせるべく何度もそう繰り返す。そうだ、今までの旅を思い出せよ俺。魔王によって心も体も傷つけられた人々を腐るほど見てきたじゃないかっ。見た目がどうであれ魔王は魔王だろ?

 なら、躊躇なんかせず倒すべきなんだ。


「う、うおぉぉぉぉ」


 俺はなんとか自己暗示してようやく魔王に近づき2度目の攻撃を与える。


「はぁはぁ。よし、これでいい。これで——」


 俺はそこまで言いかけた所で固まった。というのも、


「うっう痛い、痛いよぅ」


 魔王が切られた箇所を抑えて漏らすように泣き始めてしまったのだ。な、なんか魔王に攻撃を与えただけなのに俺がこの子を虐待してるみたいな構図みたいになってないか? しかも、なんか魔王としてのプライドなのかそれでも必死に泣き声を抑えようとしているのが、むしろ虐待されてる感増してるし。最早、やり辛いとかそういうレベルじゃないけどね!? 側から見たら悪人誰って話よ。


 って、いうか本当にちょっとだけこっちを睨みつけるのやめてくれねぇかな!? 多分、向こうからすればまだ戦意あるということを示したいんだろうけど、それも虐待されてる子の生々しい感じ増幅させてるからっ。


「ま、まだだぁぁ——」

「あっ」


 そして俺が中々次の攻撃を加えにいけないでいると、なんとか痛みを我慢し黒い魔方陣を展開しながらこちらへと突っ込んで来た魔王だったが、


「あうっ」


 急に立ち上がって走り出した為かはたまた前しか見ていなかった為か、ちょっとした段差に躓きこけてしまった。まさかこの魔王二重属性になろうとしてる??

 虐待されてるか弱い女の子かつ天然ドジっ子ガールってことか!? いや、もう一つ目ので十分やり辛いんだからこれ以上要素出すのやめてくんない? とはいえ、これ以上時間をかける訳にもいかないし...。


 ザッ。


「うぅ」

「だからそのリアクションやめてくれねぇかなぁ!?」


 覚悟を決めた俺が倒れている魔王に剣を向けながら近づくと、魔王は自分の頭を手で押さえてそんな声を上げる。

 いや、知ってるけどね!? 確かにお前たち魔物の頭にはツノが生えていてそれが弱点なのは知ってるけど、その見た目で怯える声出しながら頭押さえられると「もう、ぶたないで」的なのにしか見えないんだよ。

 いよいよ俺が虐待してる最悪な男にしか見えなくなるんだよ。


「ククッ」

「なんだ?」


 と、そんなこんなで俺が中々トドメをさせずにいると突然魔王が立ち上がり不気味な笑いを上げた。


「確かに貴様は強い。今の我では勝てない。それは認めよう。故に我も真の姿に戻る必要があった。しかし、その為にはかなり時間を要した。だが、貴様が何故かトドメを刺さないでいてくれたおかげでようやく戻ることが出来たぞ」

「な、なんだと!?」


 どうやら俺がちんたらしている間に魔王はそんなことをしていたらしい。いや、正直今更真の姿で戦われても負ける気しないけどね?

 まだ、俺十分の1くらいしか力出してないし。


「刮目せよ、我の本当の姿を。そして恐怖せよ人間」


 あっ、姿変わるんだ。よかったこれでようやく倒せる。めちゃくちゃやり辛かったからな。ありがてぇ。こい、ザッモンスター的な感じの見た目こいっ。せめて人の姿ではあるなっ。


「これが我の真の姿だぁぁぁぁぁぁ」


 その瞬間に魔王が大きな煙に包まれ全く見えなくなってしまう。


「こ、これは...」


 そしてしばらくした後に煙が消え魔王の容姿が浮かび上がってくる。堂々とした立ち姿、今までとは比にならないほどの魔力量...そして先程よりも遥かに小さく丸っこいフォルム。

 その姿は確かに人ではない。人ではないがこれはモンスターというより...。


「今度はハムスターかよおぉぉぉ」

「な、なんじゃ。うるさいのう」


 ふざけんなよ、なんで魔王の真の姿がハムスターさんそっくりな姿なんだよ。意味わかんねぇよ。よりやり辛くなってるじゃん。


「とにかく、もう我に勝てると思うなよ? くらえ——グヘっ」

「そんでもって相変わらずの弱さだしっ」


 しかし、今度は俺も止まることなく目を瞑ることでなんとか攻撃するが、あっさり吹き飛んでいく魔王ハムスターを見て唖然とする。やり辛ぇ。やり辛ぇよぉ。


「ま、まさかこんなことが。ごめんなさいなのだ。うっう、ごめんなさいなのだ。だから、殺さないで。殺されないで欲しいのだ。うっう、ごめんなさいなのだ」

「ふざけんなよぉぉぉぉ」


 そして、真の姿を持ってしても俺に勝てないことに絶望したらしい魔王ハムスターがクリクリとした可愛らしい瞳に涙を浮かべ、どこか既視感のあることを口にするので俺はたまらず絶叫するのだった。

 こんなのどうやって倒せばいいんだぁぁぁぁぁ。





 →→→→→→→→→→→→→→→→→→→→


 テスト勉強嫌すぎて変なもの作っちゃいました。なんだ、これ。









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生系勇者の俺、人々を苦しめる魔王を倒そうとするも魔王がか弱すぎてやり辛い タカ 536号機 @KATAIESUOKUOK

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ