第47話
「そんな言葉は聞き入れない。 なにを言おうが連れて行くだけだ」
「それとも、この街の騎士である俺らに盾突くと言うのか?」
その一言で初めてシャラーティルは彼らがこの街の治安を守る騎士だと知った。
だがそんなことを知ったところで態度が変わるわけでもない。
「なら僕もそれ相応の対応を取っていいわけだ。 生憎、こっちにはかわいい姫がいるからね。 できるだけ穏便に済ませたかったんだけど」
そうもいかないみたいだねとシャラーティルは呟くと同時に、鋭い目つきに変わった。
その気配を感じ取ってか、腕の中のリリーフィアがビクリと震える。
「大丈夫だよ、愛しい姫。 僕がちゃんと守ってあげるからね」
シャラーティルはリリーフィアの耳元で囁くと、グラウィルから借りた剣を鞘から抜いた。
リリーフィアにその様子を見せないように気を配りながら、相手のことをしっかりと観察する。
「そっちがその気なら俺らは無理矢理にでも連れて行くしかないな!」
騎士たちはにやりと笑うと腰に下げていた剣を手に持つ。
ただ戦いたいだけであろう彼らに、シャラーティルは依然として立っているだけだった。
剣を構えて襲い掛かってくる騎士たち。
それでも動かずその場で立っているだけに見えたその瞬間であった。
シャラーティルの間合いに入った騎士たちが倒れたのだ。
「はっ?」
まだその場に留まっていたひとりの騎士から小さな声が漏れた。
「いや〜ね、僕だって舐めてもらっちゃ困るよ。 いくら黒の妖精じゃなくても僕だって妖精だよ? 魔法しかできないわけじゃない、剣だってある程度は使えるんだから」
シャラーティルが軽く剣を振ってみせれば、辺りに突風が巻き起こった。
騎士はそれにビビって腰を抜かすと、その場から動けなくなった。
「これで僕の勝ちだね」
にっこりと笑ったシャラーティルはリリーフィアを抱き直すと改めて立ち去ろうとした。
するとどこからかバタバタという足音が聞こえてくる。
どんどんと近づいてくるその音は、シャラーティルの前で止まった。
「まっ、待ってくれ! それをやったのは君か?」
そう問いかけてきたのは、さっきの騎士とはまた違う服を着たひとりの騎士であった。
「そうだけど、それがなにか?」
さっきの奴らの仲間かと、剣を抜こうとするシャラーティルを彼は慌てて止める。
「お、俺はなにも危害を加える気はない! 逆に感謝しにきたんだ!」
騎士を訝しげに見つめながらも、シャラーティルは剣から手を離す。
「助かった、礼を言う」
そう言って頭を下げた彼だったが、シャラーティルにはなんのことかさっぱりわからなかった。
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嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす 柴ちゃん @sibachan1433
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