第46話

巧みに剣を動かし、空中から剣を振った衝撃波だけで相手に攻撃する。

シャラーティルは宙に浮くことで相手からの攻撃を避けることができるだけでなく、視界にリリーフィアをいれることで安全も確保していた。

「くそ! ちょこまかと動きやがって」

「卑怯者め、降りてこいよ! 妖精の分際で俺らのことを見下しやがって!」

大声で叫びながら届かぬ剣を振り回す男たち。

リリーフィアの前だからとできる限り相手を傷つけないように牽制することを優先していたシャラーティルだったが、流石に今の言葉は頭にきた。

「ふぅん、そっか、僕のこと妖精だからってバカにしてたんだ。 もしかして、襲ってきたのもそれが理由? そんなことにリリーフィアを、僕らのお姫様を巻き込もうとするなぁ!」

シャラーティルは叫びながら勢いよく間合いを詰め、相手の首元を剣の柄で殴った。

すぐさま後ろを振り返りもうひとりの男も同じように殴る。

軽く地面を蹴るようにしてリリーフィアの横へと飛び退くと、男ふたりは同時に倒れた。

「ふぅ、リリーフィア大丈夫だった? 怪我してない?」

シャラーティルはすぐさまリリーフィアを抱き上げる。

心配も杞憂に終わったようで、予想に反してリリーフィアは目を輝かせながら笑っていた。

「しゃりゃーてぃりゅすごいなの! こう、シュババッ!ってかんじでやっつけたなの!」

手をぶんぶんと振ってよろこぶリリーフィアに怖がる素振りは一切なかった。

「あれ? 今襲われて、危ない状況だったはずだけど…リリーフィアは怖くなかったの?」

リリーフィアはきょとんとして首を傾げる。

「なんでなの? だって、しゃりゃーてぃりゅがまもってくれりゅなの。 だからこわくないのよ!」

「そっ、そうなんだ…」

シャラーティルは苦笑いしながらさり気なくリリーフィアから視線を逸らした。

そのまま足元に転がる男たちに目をやれば、気絶から目覚めることなく床に伸びている。

「リリーフィア行こっか、探検の続きをしよう」

そう言ってシャラーティルが足を踏み出した瞬間、目の前に何人かの男が立ちふさがった。

「なんですか? そこを通してください」

シャラーティルはリリーフィアを庇うようにしながら男たちを睨みつける。

「お前がこれをやったのは分かってるんだ。 何も言わずについて来い!」

男たちはシャラーティルを連行しようと腕を掴んだ。

それを払い落としてリリーフィアの耳と目を塞ぐ。

「嫌だと言ったら?」

普段の飄々としたシャラーティルからは考えられないような低い声で相手に問う。

リリーフィアが姫ならば、妖精たちは騎士ナイトである。

シャラーティルはなんとしてでも安全に、平和にこのお出かけを終えないといけないのだ。

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