第45話

少しばかりのお金を手に、シャラーティルとリリーフィアは街に出かけていた。

腰に剣を携えたシャラーティルはリリーフィアを抱きながら街に目を向ける。

市場のような街の樣子にリリーフィアは目を輝かせていた。

「しゃりゃーてぃりゅ、あれはなになの?」

リリーフィアが指さしたのは飴がけされた果物に飾りのついた可愛らしいものだった。

「ん? あれなんだろね、ちょっと買ってみようか。 ねえおじさん、それ一つちょうだい」

「おう、毎度あり! 美味かったらまた来てくれよな」

真っ赤で大きな甘酸っぱい果物に、透明な飴がかかったそれは、陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。

果物のてっぺんに葉っぱを再現するかのように付けられたクッキーはサクッと軽い口当たりで、果物と飴の味をさらに引き立てている。

「おいちいなの! しゃりゃーてぃりゅもひとくち食べるといいなの!」

頬を押さえて幸せそうに食べるリリーフィアに促されて一口食べたシャラーティルは目を輝かせた。

「これ美味しいね。 飴と果物がいい具合に馴染んでいて、食べやすい味だ」

ふたりで分け合えば果物の飴がけはあっという間になくなった。

「次はどこに行こうか」

リリーフィアを抱いたままシャラーティルは街の中を歩き回る。

気になったところに立ち寄りながら歩いていれば、目の前にひとりの男が立っていた。

彼は大柄な体にがっしりとした身体つきで、人目で細身で子連れなシャラーティルに目を付けたんだとわかった。

「うわぁ、来るかなとは思ってたけど流石にはやすぎじゃない? まだ僕達見始めたばっかりなんだけどな〜」

そう呟きながらリリーフィアの目をさりげなく覆いながら抱き直し後ろを振り向けば、案の定別の男が立っていた。

「はぁ、できるだけ戦いたくないんだけど、どっか行ってくれたりしないよね」

「はっ、当たり前だろ。 そうほざいてられるのも今のうちだ!」

男は腰に携えていた剣を引き抜くとシャラーティルに襲いかかる。

それをさっと避ければもうひとりの男が斬りつけてくるので、グラウィルに借りた剣で軽く受け流す。

ふたりの上手いとは言えない剣を流しながらシャラーティルはなんとかリリーフィアに怪我をさせないようにここを切り抜ける方法を考えるが、そうそういい案は出てこなかった。

「はぁ、めんどくさい。 リリーフィアちょっと待っててくれる?」

素早い動きでリリーフィアをベンチに座らせたシャラーティルにはもう動きを制限するものがない。

「じゃ、反撃してもいいよね?」

リリーフィアに応援されるなか、シャラーティルは羽ばたき宙に浮き上がった。


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