第48話   追想

思い出した。


我が家では保健所出身のワンコを飼っていた。

オリの角でブルブル震えて、上目遣いに人間を見つめる


背中を丸めて、

とてもとても飼い犬候補にはなりそうもない

茶色い雑種犬


クリスマスプレゼントは犬がいいと言う子供達に「あの犬だけは駄目だよ」と言ったのに、帰りの車に乗っていた。

「うちが連れて帰らないと殺されちやう」

そういう子供達に負けて飼うことにしたのだ。


飼い主に慣れるまで一年

ちょっとでも叱ると心を閉ざしてしまう。


一目でワケアリ

「なんでこんな子なの?」と聞かれた。


けれど、どんどん仔犬らしい姿になって、頭のいい犬で可愛かった。


このワンコも、20年経ち、腰が立たなくなり散歩も儘ならなくなった。

それでも、私を見つけると一生懸命立とうとして前足でもがく。

お帰りの挨拶をしたいのだ。


まず、仕事から帰るとワンコの頭を撫で、お漏らしで汚れたワンコをお風呂で綺麗にする


夜は私と一緒に寝た。


ある冬の日

仕事から帰るとワンコがずぶ濡れのまま放置してあった。


寒さで震えて、

それでも私を見つけて、しっぽをゆっくりと振っていた。


私より早く帰宅した夫が

お漏らしした犬が臭いと、お風呂の残り湯をバケツで何度も、ワンコの頭からかけたらしい。


冷たい水をかけられても、動けないワンコは逃げることも出来ない。


夫は一言

「くせえんだよ」と吐き捨てた。


舅が亡くなり、ワンコのことを思い出した。


夫は一体、どれだけ私を傷つけたんだろう。


結婚して徐々に思い知らされた


この人には赤い血は流れていない

この人は人間ではない






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だからといって ゆゆし @yuyusi101915

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