第22話 魔王の誕生
エルフの国から、アビター王国の玉座の間へ帰還する4人。先程まで落胆気味のフォルだったが、最終的にはそこそこ楽しめたと満足そうに玉座へ腰をかけ、本題である青髪メイド……ロデラの方へと視線を向ける。
「状況説明も面倒だ、死にたくなければ抵抗するなよ」
俺がそう伝えると、ロデラは小刻みに頭を振った。
ほとんど脅迫に近いような気もするが、それを肯定だと判断した俺は、右手をロデラの頭に乗せて魅了の粉を発動する。
今回は肉体に触れる事で身体の構造を見通しつつ、出力を制限して脳内に送り込む。暴走しそうな部分は祝福を与えて、即席で長く使い物になるような生物を創っていった。
そうして羨ましそうに見つめるサリアとアイリーンを横目に5分後、ロデラ混沌バージョンを完成させることに成功した。
見た目としては青のロングヘアーはそのまま、身長を少し上げ、肉付きが良くなっている。そして戦闘面では魔力や魔法への適正が高かったため、そちらの才能を最大限伸ばした形である。
ただ本体で創った時とは違い、ほとんどが潜在能力を引き出しただけにすぎないので、サリアたちのように潜在能力以上の力は祝福分でしか与えられていない。
それでもこの次元からしたら、絶対に誰も倒せないような化物である事には違いないのだが。
「気分はどうだ?」
ヤバい薬か、闇の帝王しか言わなそうな言葉を放ってみると、ロデラは脳内に詰まった魅了の効果で顔を蕩けさせながら答える。
「この世界で1番の幸せ、者です…!あなた様に私の一生、を、捧げさせてください…!」
喋り方が少し独特だが、今回は謎の果実にする事なく兵士を創る事ができて良かった。
「それじゃ、君にはこの次元を管理してもらう。簡単に言うと俺の魔力作り、そのために一生安定した混沌を生み出し続ければ良い」
それだけの説明だと流石に理解が追いつかなかったようで、詳しい内容はアイリーンに丸投げする。本当に便利だなと思いつつ数分後、完全に理解したロデラが俺の前で跪いた。
「承知、致しました…!必ず、最高率で、安定した、混沌を、捧げ続けます…!」
そう言いながら歓喜の涙が止まらないロデラに多少引いてしまう俺。やっぱ魅了は怖い。
「最初の内はアイリーンに見に来させる。詳しい内容は同郷のサリア、管理はリディに聞くと良い。初めての試みだが、今後も魔力の為に支配する次元を増やしてく必要があるし、試験的な事も恐れず気軽にやってくれ」
今言った通り、この次元だけでは収穫できる魔力量が心許ない。双葉に転生した経験からか、生存本能の高い俺は、保険は多ければ多いほど良いと考えていた。なので今後も支配していく次元を増やしていきたいと思っているので、そこのノウハウは大切になってくる。
そのためにも、第一号であるロデラには頑張って貰いたい所だ。
それに今後ロデラのような形態が増えて来たら、混沌の魔力収集で序列を作って競わせるのも面白いかもしれない。
「承知、致しました…!」
「それでフォル様、本体であらせられる大樹様へと繋げる苗木様はどこに致しましょう」
アイリーンの俺への敬意が爆発してわかりにくい文章になっているが、これはこの次元の魔力を回収して、混沌の森にある本体へ経由させるサーバーのようなモノの設置場所を指している。
「君はどこに置いて欲しいとかある?」
俺がロデラにそう聞くと、彼女は慌てた様子で俺に一任する旨を伝えた。どうやら、自分のために俺へ指示するというのがどうしても許せないらしい。
という事で俺は適当に玉座付近へサーバーである成長しない苗木を起き、アイリーンに帰宅用の次元の門を開かせる。少し味気ないが、サリアの次元は数年後を楽しみにしていよう。
結局これと言った異世界生活は堪能できなかったけど、久しぶりに二足歩行で未開の地を探索できたり、偽聖女の偽世界樹には笑わせてもらった。もう少し混沌の魔力を回収できる基盤造りで他国に乗り込んだり、下で荒れている国民たちをイジるのも楽しそうではあるのだが…。
なんだかんだ言って、混沌の森が落ち着くんだよな。人間時代もインドアな方だったのもあるが、自分の半分が植物というのも大きいんだろうな。
そんな事を考えながら次元門を潜ろうとする直前、謎の気配が次元門の方向に現れる。
それにアイリーンたちも察知したようで、ロデラ含めて一瞬で俺の前へ立ち塞がった。特にロデラに関しては、先程までの消極的そうな様子が嘘のように殺気立っている。
「次元門の行き先が変えられています」
アイリーンの言葉から数秒後、次元門から少しだけ身体が見えると同時に、1番前にいるロデラが神秘的な槍を出現させ攻撃を繰り出した。
しかしその槍は瞬時に破壊され、代わりにロデラの肉体が勢い良く吹き飛ばされる。
飛ばされたロデラを見てみると、攻撃の直前でバリアは展開できていようで、骨が数本折れる程度で済んでいた。
「ただのエルフが耐えるなんて、これが世界樹様のお力ってことか!!」
若々しく元気そうな女性の声と共に、真紅の髪を肩につかないぐらいにたなびかせながら、高校生に近い背丈でありながら、地球には絶対に存在しないような美形の女性が次元の門から現れた。
転生したら双葉でした 〜生き残るために進化してたら、森の支配者になっていた〜 @sup1857
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。転生したら双葉でした 〜生き残るために進化してたら、森の支配者になっていた〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます