友達の定義
汐なぎ(うしおなぎ)
全一話
僕は周りに
はじめは僕を誘おうと話しかけてくる奴もいたが、一学期も
そんな僕とは正反対に、クラスの人気者で、いつもみんなの中心で笑っている奴がいる。僕とは決してまじわることはないと思えるが、いつも聞こえる笑い声につられて、彼を振り向くことが何度かあった。しかし、時々、彼の笑顔が、つらそうに、寂しそうに見える時がある。そんなことは有り得ないと思いつつも、彼が僕と似ている気がして、つい目で追うようになった。
ある日の放課後、僕がゴミ捨てに行くと、校舎裏から声がした。誰かが告白していると思い、気不味くなって方向を変える。その時、後ろから彼の声がした。
「悪い。邪魔したな」
話しかけられて、僕は振り向く。その時、泣きながら走り去る女子を見て、彼が告白を断ったのだと分かった。
「こっちこそ、タイミング悪くてごめん」
そう言うと、彼に頭を下げて、その場から慌てて走り去った。
僕がゴミ捨て場から帰ってきても、彼はまだそこにいた。彼は僕を見ると、酷く傷ついた顔をして寂しそうに笑う。
「あの子、俺の笑顔が好きなんだってさ」
唐突にそんな事を言われても、どうすればいいか分からず僕は戸惑う。しかし、彼は気にせず先を続けた。
「なあ。お前から見て、俺ってどう映るの?」
「え? 何で僕に?」
彼が何故こんな話をするのか分からず、間の抜けた質問をする。すると、彼は真剣な顔をして僕に告げた。
「俺の事、いつも見てるよな?」
バレていたのかと、鼓動が早くなる。否定も肯定も出来ず黙っていると、彼は悲しそうに僕を見た。それから「何でもない」と言って立ち去ろうとする。
このまま彼を帰してはいけない。僕はなぜかそう思って、
「え?」
驚いたように振り向く彼に、僕は告げる。
「いつも寂しそうだなって……でも、気にしないで」
話している途中で後悔し、言い訳のように付け足す。しかし、彼は嬉しそうに僕を見た。
「なあ。友達になってくれないか?」
「え、何で?」
意味が分からず聞き返すと「俺、友達いなくて」と言って
「嫌ならいい」
友達なら沢山いるだろうと言いかけるが、いつも寂しそうな彼を思い出し、僕は慌てて引き留めた。
「嫌じゃない」
そう言うと、彼はありがとうと微笑んだ。
友達の定義 汐なぎ(うしおなぎ) @ushionagi
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