孤高のエクソシストの、馨しい闘いの奇蹟

エクソシズムというからには、霧の立ち込める夜中の墓地の中、夜露に濡れた木々からスパニッシュモスの下がる風景をイメージするが、それは半分正解であって半分は不正解だ。
 香り高い紅茶の名を持つ孤高のエクソシストの感性は、乾いた煉瓦のように端的に事象のみを捉え、そして芳しい香とともに彷徨う者達への厳命を施してゆく。

エクソシストの武器は時と場合と対象に応じて様々な物が用いられるが、その多種多様なディテールは、まさにスチームパンクの醍醐味と言えるだろう。

霊や魔物の絡む事件の背景には、教会や王国のパワーゲームがあり、レジスタンスの意志や市井の人々の生活があり、信仰も裏切りも哀しみもある。

 この物語を読むには、完全にこの世界に入り込む必要がある。だが、抜け出す必要はない。何故なら、孤高のエクソシストの闘いと聖別の軌跡を、野の花や草の香りと共に目の当たりに出来るのだから。