第4話 おにごっこ

でね?魔法使えるの。そう、俺が。

あっ、待って待って、厨二ちゅうに病じゃないよ、俺そんなんじゃないから!マジで!!

うん、でね、「霊魔法」ってのがあるの。

霊にだけ通用する魔法。

は?幽霊がいるのか?

そんな根本から?マジ??

うん?そうそう、テンプレの属性あるよ。

火、水、風、土、闇、光、無。

え、もっとあるだろって?

いや、派生はあるけど大元おおもとはこれだけ。

いやそんな不満そうな顔すんなよ。

え、なに、俺が悪いん?

えーっと、謝罪必要??






『ねぇねぇ、あるじ』

「んぁ?なんだ、シトリン」


ちょいちょいとすそを引き、きゅるんと見上げてくるシトリン。

可愛いなぁと思いつつ、見ていると、その可愛らしい口元から可愛くない核ミサイル級の言葉という名の爆弾が投下とうかされた。


『デイリン、アストラルにちかづいてるよ??』

「はっ?」


一瞬意識が宇宙うちゅうに飛んでいった。

なんだって?

あすとらるにちかづいてるよ?

はっ?

デイリン?

アストラルに近づいてんの!?

あわてて位置を確認すると…、マジだった。


「嘘だろ……!!」


全力で駆け出す。

ちぎりで帰ってくるように言っても『大丈夫ですよ〜!』とか、『アイツら強いから、腕試ししたいんですよ!』とかほざく。

クッソ、俺が危惧きぐしてるのはその4人ソイツらにバレることじゃない、アストラルソイツらの大元にバレることなんだよ!!

追いついた時には、もうソイツらの目の前に飛び出す直前だった。


「ちょっ、まっ!!おい、デイリン!!そっちに行くんじゃない!!」


そう言っても、もう遅かった。

飛び出すなり4人への攻撃体制に入るデイリン。

だからやめろってば!!

瞳孔どうこう開き切って思いっきりSの顔になってっから!!

一応主人としての命令権めいれいけんはあるので、気を込めて『止まれ!!』と念じる。

その瞬間、デイリンは攻撃しようとした姿勢で空中で止まった。


「なっ、なんだ…?」

「ぇあ…?」


4人のうちひとり…、あっ、今日昼に会ったヤツだ。

ソイツは俺たちに気付いてたっぽいが、それ以外は…、うん、今気づいた感じだな。

あっ、雷の霊がいるー。

こんにちはー。

手を振ると、俺に気づいてなかった3人のうちひとりに憑いていた雷の善霊が戸惑とまどいながらも手を振り返してくれた。

っていう現実逃避あそびはやめて、デイリンを呼び戻さなければ…。

もう一度気を込め、『戻れ』と命令する。

ひゅっ、とデイリンがかき消えた。

もちろん俺の中に戻ったのだ。

そして、やっと状況じょうきょうに気づいたのか昼の高身長(うらみとねたみと怨念おんねんを込めてお送りいたします)が俺を指差す。

人を指さしたらいけませんって習わなかったのかお前。


「あーっ!!昼のヤツ!!お前、俺らに関わらないんじゃないのか??」


ちっ、陽キャのパリピにしては勘がいいな。

脳内だけでなく実際に舌打ちしかけたが、ギリギリでブレーキをかける。

俺はデイリンとは違うのだ。

俺はまた少し声色こわいろを変えていう。


「確かにそう言いましたね。では…」


ひゅっ


スタリと俺がり立ったのは男の背後。

俺の手には青色のやいばと黒いの大鎌が握られている。

そしてハラハラと舞う黒い破片はへんと、ころんと転がる霊結晶。


「これでチャラで」

「………は??」


何が起こったかというと、男の後ろにもう一匹暴走善霊がいたので俺が大鎌コレでぶった斬ったのだ。

この大鎌『ヒイラギ』は、強制消滅と違い、霊を痛みを感じさせずに霊結晶に封じられる。

ま、俺が言いたいことは、あんたを攻撃しようとしてたやつを倒してあげたから今の見なかったことにしてねー。

と、そういうことだ。

んー?あっ、今倒したこの霊って暴走した善霊しろの中の中?

しいな、俺のは中の上だからあと一個上ならよかったのに。

ま、とりあえず…、


「倉庫行きだな、アオイ」

『ですね』


ふわっ、と現れたのは青い髪の少女、アオイ。

アオイはふわりと霊結晶の前に降り立つと、そっと両手でかかえた。


「みんなによろしく」

『らじゃあです』


おちゃらけたように敬礼し、霊結晶をもってアオイはまた消えた。

チラッと男たちを見ると、まぁ…、うん、すっごい、なんかその…、アレな顔をしていた。

ちょっとココには書けないけどそのぅ…、なんとも言えない顔だった。


「えーっと、じゃ、お上の人によろしくお願いしますね」


ニコッ、と営業えいぎょうスマイルを浮かべる。

まぁ、フードかぶってるから口元だけだけどね。

サービスだよサービス。

そして…、うん、とりあえず逃げよっか。

あの男に憑いてる雷の霊で脚力強化して追いかけられたら厄介やっかいだし。

手短てみじかな屋根にいっぱつでジャンプし、走る。


「シトリン、いる?」

『あい!』


またまたぽんっ!と現れ、走る俺に付きうようにふわふわと浮いている。

シトリンも雷の霊なので、とりあえず速度強化をお願いする。

ブーツに黄色い雷がパチパチと纏わりつき、足が速くなる。


「ありがと、あっちは?」

『んー、なんかひとりでぶつぶつつぶやいててぇ、きもちわるかったぁ!』

「うん、直球デスボール。たぶん上のお方々と会話してるんだよ、そう言わないでやって」

『んぅ』


シトリンという究極のショタのおくちから『気持ち悪い』という殺人爆弾さつじんばくだんが放たれた。

シトリンはめっっっっさ腹黒なので、見た目はキュート、中身は毒を仕込しこんだヘドロチョコのような生き物(?)だ。


「追ってきてる?」

『んー…、あっ!ボクとおんなじかみなりさんのひとがおってきてる!』


うっわ。

うっっっっわーーーーー。

いやだなあぁぁぁ。

きゅっ、と顔がしぼみんでいるのがわかる。

モミモミと顔をみ、元に戻す。


「とりま…、逃げつつターゲット回るかぁ。

 こっから一番近い場所にいるターゲットは?」

『四時の方向、約五キロ先。』


今度はルビーが現れ、四時の方向を指差しそっとささやく。

ありがとう。

オーケー、そっちね!


ダンッ!!


俺は屋根をり、ターゲットの方向に走り出した。




ー→↑↓←*→↓↑←ー




「ひゅー、かーっくいーい」


俺は嫌味いやみをせいっっっだいに練り込み、仲間を称賛しょうさん(呪)する。


めてくれるのは嬉しいけど、なんか嫌味が込められてる気がするのは気のせい!?!?』

「気のせい気のせい」

『そうかなッ!?!?』


お前のような勘のいいガキは嫌いだよ。

っていうことを同じくガキの俺が言うってね。

亜麻あま色の髪、海のような瞳の仲間ぜんれい、ユイジア。

ちっ、イケメンほろべ!!

俺が怒りの視線光線ビームを放射すると、何かを感じたのか振り向くユイジア。


『んっ?今、ぞわっと寒気がしたんだけど。幽霊なのに』

「気のせい気のせい」


先ほどと同じセリフを繰り返すと、ユイジアはまた暴走善霊に向き直った。

その時、髪から汗がしたたり落ちた。

うーーーーーーん。

有罪ギルティ

って、あ。


「スマン、ユイジア。

 追っ手が来てるから、俺ちょっと次の標的ターゲットのとこ行ってくるわ。」

『えっ?ちょっ、どういう状況!?追っ手ってだれ!僕どうすればいいの!?』

「そのまんま仕留しとめちゃっていいよ。

 あっ。でも、霊結晶は持って来いよ。」

『え、まっ、まってってば!奏!奏!?』


しーらねッ!!

悪いのは俺じゃなくって結構引き離したのに執拗しつように追ってくるアストラルだからな!!

屋根の上での走行を開始してほどなく、ユイジアから通信が入った。

『霊結晶ゲットしたよ〜、って、ふぉわっ!?あ、アストラル!?追っ手ってアストラルなの!?ちょっ、助けて!!宿り石にさせられちゃうから!マジで!!』

という内容だったのだが、まぁ…、大丈夫だろ。多分。


ーーーーーーーーーーーーーーー

灰色図鑑!


シトリン (旧名:なし)

見た目は舌論ぜつろんキュートなショタ、中身は毒をたっぷりとり込んだヘドロチョコというギャップにしてもヤバすぎる個性を持つが、奏の仲間内だとかなりマシな部類に入る。

なぜなら単純、『話が通じるから』。

ちなみにあれでもランクは上の下とラムのひとつしたである。

自分のことを卑猥ひわいな視線で見る奴のことをGから始まる虫を見るかのような視線で見る。

たまーにお口から言葉という名の殺人兵器デスボールが飛び出すことがある。

シュークリームが大好き。

属性は風の派生で『雷』。

異能は『静電気を発生させる』こと。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

やぁ。作者こと天音あまねだよ。

今回さぁ、大鎌の『ヒイラギ』が出てきたでしょ?

あれね、奏の先祖のやつ。

そのご先祖は今は死神として隠居(?)してるよ。

ちなみにね、奏のゼラニウムを燃やしたのはその死神の甥なんだぁ。

クソほどどうでもいいね。

天音も忘れかけてた設定だし、今後、この短編中で出てくる予定もないから、たぶんどっかに飛んで消えくと思うよ。

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