一章 第1話 『召喚』
「うっ・・・」
クネヒトが目を覚ますと、藁布団が全身を包むように掛けられていた。
起き上がり、クネヒトは衣服に纏わりついた藁を払いのける。
キョロキョロと辺りを見回す。
赤いレンガで敷き詰められた建物だ。
そばには柵に繋がれた馬が五頭繋ぎ止められいた。
もしかして僕は家畜小屋の中にいるのだろうか。
「目を覚ましたのね?」
突然、後ろから少女の声がした。
振り返ると、灰色の瞳と赤い髪をしたポニーテールの少女がそこにいた。
肌には雀斑が散らばっていた。
「君は・・・誰?」
「私はノルン。この土地、カレワに住んでいる農家の娘よ。それであなた名前は?」
「あ、小豆・久根人」
「よろしくね!」
少女は微笑んだ。
「貴方、吹雪の中、雪山で倒れ込んでいたのよ。私が見つけなかったら、死んでいたわ」
そうだ。あの怪しい箱を開けた途端、視界が急に真っ白に染まったんだ。
全身が凍って意識が飛んだ気がする。
「付いてきて」
クネヒトは少女の後に付いて、小屋の外へ出た。
「私一人の力じゃあ貴方を連れて帰るのは無理だから、この子たちの力を借りて小屋まで運んでもらったの」
・・・え!!
嘘!?
開いた口が塞がらなくなった。
小屋の周りには、赤いトンガリ帽子を被った奇妙な生物がいた。
垂れ下がった灰色のあごひげをはやし、指は4本ある。また、耳は尖っていた。
それは童話に出て来る小人のような外見をしていた。
「ふふっ、人間を襲って食べたりはしないわよ」
まさか、クリスマスに願った事が、こんな形で叶ってしまうとは夢にも思わなかった。
異世界召喚はアニメとかの空想上の話かと思っていたけど・・・。
クネヒトは、ぼんやりと現実に起きている不思議な光景を眺め続けた。
「大丈夫?ぼーっとしているけど。あ、もしかして!!風邪引いちゃった」
「えっと、ち、違うよ。その初めて見る生き物だったから・・・」
「生き物じゃないわトムテは妖精よ」
二本の足で歩く姿は、まるで人間のようだ。
トムテたちは馬に跨がり、辺りで散歩させたり走らせたりしている。
「働き者なんだね」
「トムテは私たち農家にとって有り難い存在なの」
「只働き?」
ノルンは口に手を添えてクスクスと笑った。
「まさか、違うわよ。働いて貰ったら毎日、しっかりとご褒美を挙げているわ」
「ごめん。変なこと聞いて」
「別に謝らなくてもいいのよ。
・・・そうだ、クネヒトって何処から来たの?」
「東の果てにある島国で日本って言うんだ、知らないよね?」
「知らない国ね。そこには帰ることが出来そう?」
「それは・・・難しいかも。可笑しな話だとは思うけど、気が付いたときには、この土地にいたから」
「分かったわ。ちょうど、この子たちのミルク粥を作るのに帰えるの。 もし、良かったら家に来ない?パパとママに泊まらせてもらえるように頼んであげる」
「本当に!?いいの」
「良いの。困っている人がいたらほっとけないわ」
ぴゅ~っ
「みんな、お家に帰ろ~」
口笛で呼びだすとテコテコと、トムテたちがノルンの元へ集まり始めた。
なんだかピ〇ミンみたいだ。
クネヒトとノルンは雪が降り積もった、一面の真っ白な山道を歩き始めた。
クランプス・クネヒト~異世界からの贈り物~ 松ぼっくり @bokunatu
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