二 入社面接ハラスメント二
小田亮が入社面接を受けてから数年がたった。
小田亮の地元に住む原田伸子のもとに、入社試験書類審査合格の通知が届いた。原田伸子は二次試験の筆記試験を受けた。数日後、筆記試験に合格したと連絡があり、原田伸子は面接試験を受けることになった。
面接試験当日。
「今日は重役面接を行ないます。これが最終試験です」
面接試験控え会場で、人事担当者がそう説明した。
人事面接を一次二次と受けても、重役面接で人事の判断がくつがえされる場合が多い。この企業もその例に漏れず、重役が人事に口出して経営陣が各課の業務を信頼していない企業なのだと原田伸子は思った。
面接会場には三人の重役と人事の担当者がいた。原田伸子が挨拶して椅子に腰掛けると、エントリーシートを見ながら重役の一人が質問した。
「我が社を受検した志望動機を話してくれ」
原田伸子はこのバカと思った。志望動機はエントリーシートに書いてある。読んでいないのか?それとも、私が、書いてある事と違う事を言うと思ってるのか?
「実家のすぐそばなので、通いやすいからです」
「たしかに実家の番地は、勤務希望の工場の番地の近くだね。勤務地に、実家の近くの工場を希望しているが、こんなに近いと希望どおりにはならんよ」
私が女だと思ってバカにしてるのか?実家から近ければ交通手当も、住宅手当も不要のはずだ。重役たる経営者が何を言いたいのだ?
『お前の実家が工場の近くなら、実家から遠い他の工場へ勤務させるぞ』
と今からパワハラ風を吹かせ、嫌みを言っているに過ぎない。単なるアホだ・・・。
もう一人の重役が質問した。
「会社でしたい事は何かね」
「事務職募集とありましたから、入社試験を受けました」
事務職を募集してるのに、他に何かさせるのか?それなら労働基準法違反だぞ。コイツそんな事もわかんないのか?
「他に、我社を選んだ基準は何かね」
「会社説明会の担当者の対応が良かったので、会社自体もそのように良い会社だろうと思い、採用試験を受ける気になりました」
社員は会社の顔だと思ったが、経営陣がこれでは、この会社の顔は丸潰れだ・・・。
さらに、もう一人の重役が質問した。
「我社でしたい事はないのかね?」
「事務職を募集していたので、事務ですね」
同じ事を何度訊くんだ。さっきのヤツが訊いた事を忘れたのか?それとも事務職募集を謳いながら、採用試験を受ける私に、事務職以外の事もさせるのか?何をしろと言うんだ?
「応募の理由は」
「実家から歩いて五分くらいです。実家から歩いて通えます」
お前らはアホか。同じ事を何度聞くんだ。これほどはっきりした志望動機はないぞ。不合格にするために、こんな質問ばかりするのか?それなら、さっさと終わりにしろよ!まったく、重役だからって、偉そうに訊いていやがる。お前らの質問はパワハラ、セクハラもいいとこだぞ・・・。そう思っているうちに何度も同じ事を訊かれ、原田伸子が憤慨している間に面接が終わった。
後日、原田伸子のもとに、入社試験合格と、入社内定の知らせが来た。事実、原田伸子は面接した重役たちを思いだして呆れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます