お互いに -後編-
「……反省した?」
「はい。すみませんでした」
互いに初めて同士をしたその夜のこと。流石に五時間ぶっ続けで行為をすることは出来なかった二人は延長料金が勝手に取られるということもあり、退室時間前に余裕を持ってホテルを出た。
既に外は完全に暗くなっており、ちょっと怪し気な裏路地からは早く出たい空気になっている。
「さて……予定が狂いっぱなしだけど。イルミネーション、見に行こっか」
告白をすっ飛ばして既に色々とヤってしまったが、最後くらいは綺麗に締めようと佳乃は当初予定していた場所に向かうことにする。
手を握り、歩き出す二人。佳乃の手は去年湊がプレゼントした手袋に包まれており温かそうだ。そこにはホテルに入る前の般若はおらず、幸せそうな美少女がいる。
(佳乃の顔、久し振りにちゃんと見たな……)
思えば、最近は佳乃の顔すらまともに見れていなかった。そんなザマでは自分から可愛い幼馴染を持って行ってくださいと言っているようなものだ。そんな簡単なことも考えられなかった自分の情けなさを湊は痛感する。
「着いたね!」
湊が落ち込んでいる間に二人はイルミネーションが輝く広場に辿り着いた。そこで佳乃は湊の方に向き直る。
「では。何か……順番めちゃくちゃになっちゃったけど、私から湊君に言いたいことがあります」
光の雨の下、少しだけはにかんだ後に真剣な表情で佳乃は湊に向き直る。その様子を見て湊は焦った。このままでは格好悪いところしか見せていない。事実、格好悪いことばかりしていたのだが、せめて今日の終わりくらいは決めさせてほしい。
「ま、待って。その前に俺から……」
「……何?」
せっかく覚悟を決めたところに水を差されて僅かに不機嫌になる佳乃。そんな彼女を前にしながら湊は慌ててバッグから念のため持って来ておいたあの日のマフラーを取り出して彼女の首にかけた。
「あ……覚えててくれたんだ」
「そりゃもう。はい」
僅かに不機嫌だったのが和らぐ佳乃。湊はそこから畳みかけるように言った。
「それで……マフラーを送った訳だけど、その意味があって」
「それって……!」
密かに調べて知っていたマフラーを異性に送る時の意味。佳乃の顔に期待が宿る。湊はこの期に及んでどう言おうか悩んだがこのまま直球で言った方がいいと判断し、佳乃の綺麗な目を見て言った。
「俺は、あなたに首ったけです」
「……うん!」
「こんな俺ですが、これから頑張るのでお付き合いしていただけませんか……?」
「もう! 何でそこで自信なさそうにするの?」
佳乃は笑顔で湊を責める。そうしながらも彼女もポーチからこの日のために選んだプレゼントを湊に見せた。
「はい、これは私から。ペアリングの意味は知ってる?」
「え……? いや、何かカップル感あるプレゼントという感じしか」
「ふふ。指輪はね、切れ目がないから永遠って意味があるんだよ。それがペアだから二人で永遠にいようねってこと」
「ってことは……」
佳乃はこの日一番のいい笑顔で湊に抱き着いた。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
耳元で囁くように告げられた言葉。そのまま二人は強く抱きしめ合い、少しだけ顔を見合わせ、祝福されたキスをするのだった。
脳漿炸裂する前に 古人 @furukihito
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