うろおぼえ失楽園

星見守灯也

うろおぼえ失楽園

神は天と地をつくり、電子レンジにかけた。

――――できあがったものがこちらに。




六日目、神は人を造った。

それから自分に似せて意識を吹き込んだ。

男、そして女である。

「イイかんじじゃん」と神は自画自賛した。


はじめ神は一体を作った。

しかしそのあばら骨は腹まであった。

それどころか頭が二つあり手足が二対ずつあった。

「さすがに多かった。わけよう」

神は一体を分けて二体にした。男と女であった。




神は個人庭園を造り、地上の美しいものを独占した。

その管理者として男と女を置いた。


神の庭園の中央に、樹が二本生えている。

生命の樹と、知恵の樹だった。

神は言う。

「あの果実を食べると死んでしまう。食べるなよ。絶対だぞ!」




さて、神がいないとき蛇は生命の果実を食べた。

蛇は脱皮しながら女に言った。

「おいしかったし、死になんてしなかったよ」

女は知恵の実を取った。そして男と食べた。

なるほど、裸でいることが恥ずかしいと思った。

女は胸と股間を隠した。

男は自分のちんちんが大好きだったが女に言われて隠した。


さて、食べたことがバレたら神に怒られる。

そう考えた男と女は、知恵の効果を存分に発揮した。

まず神の庭園を破壊した。

神の花壇を荒らし、神の噴水を汚し、神の台天目を打ち割った。




神が帰ってきた。

そして、何から怒って良いのか解らなかった。


女は泣きながら言った。

「神の大事なものを壊してしまったから死のうと思った」

「知恵の実を食べたのに死ねない」と男も泣いた。


神は何も言えなかった。

黙って楽園から追い出した。





男と女はムカついた。

楽園を出て行くときに、門をわざと閉めて行かなかった。


門は開き、そして世界に動植物が溢れた。

地上の美しいものは、もう神だけのものではなくなった。


神の怒りにより、蛇は足を失った。

単純で、より自由に動ける姿へと「進化」した。

蛇は喜んで楽園を去っていった。

足のない体を器用にくねらせて。




「どうしてこうなった」

神は二人の姿を見おくってため息をついた、

「なんで俺に似たんだろうなあ」と。




「俺が似せて作ったからだ」

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うろおぼえ失楽園 星見守灯也 @hoshimi_motoya

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