愚か者達の末路
それはミラベルやナゼール達が第五学年に進級した時の話である。
この頃にはミラベルもナゼールも、ダゴーベールやバスティエンヌ達から馬鹿にされることはなくなっていた。ダゴーベールやバスティエンヌ達がそれどころではない騒ぎに巻き込まれていたのだ。
「ちょっとダゴーベール様! どういうことでございますの!? 貴方の婚約者だという方から慰謝料の請求が来ておりますの!」
雷のように激しい怒り声のバスティエンヌ。
「それはこっちのセリフだ! 俺はお前のせいで婚約破棄を突き付けられたんだ!」
ダゴーベールも負けていない。噴火する火山のような声である。
朝、皆が登校して来る中、バスティエンヌとダゴーベールが大喧嘩をしていたのだ。
ダゴーベールもバスティエンヌも見た目だけは良いので恋人同士になったのだ。しかし、ダゴーベールはラ・レーヌ学園には通っていない婚約者がいることを黙っていた。また、婚約者を蔑ろにしていた。そしてそれに憤りを感じた彼の婚約者はダゴーベールの素行を徹底的に調べ上げ、彼が学園でバスティエンヌと関係を持っていることが判明した。これに激怒したダゴーベールの婚約者と彼女の両親により、彼は婚約者から婚約破棄を突き付けられた。もちろんダゴーベールの有責なので、多額の賠償金を請求されている。そしてバスティエンヌの方にも多額の賠償金の請求がされたのだ。
ダゴーベールとバスティエンヌは皆が見ていることなど気にせず互いに罵り合っている。
「くそっ! バスティエンヌ! お前さえいなければ!」
パーン!
高い音が響く。二人の喧嘩を見ていた者達が騒然とする。
ダゴーベールがバスティエンヌを殴ってしまったのだ。
ラ・レーヌ学園には、いかなる理由があろうと校内での暴力行為は禁止という校則がある。これを破った場合、軽くて停学、重くて退学処分が下される。ダゴーベールは女性を殴ったということで、極めて悪質だと判断され退学処分になったのだ。また、彼は両親からも厳しく叱責され、後継ぎだったのだが廃嫡されて貴族籍を抜かれて平民にならざるを得なかった。そして彼を受け入れてくれる場所はなく、ついにはスラム街に行くしかなくなったのであった。ナルフェック王国のスラム街は他国よりはマシであるが。ちなみに、ダゴーベールの妹は優秀なのでペリニョン侯爵家は後継には困っていない。
バスティエンヌの方も、賠償金のことで両親から厳しく叱責された。また、彼女は貴族令嬢でありながら男性関係が派手だったので、純潔を失っていることが判明した。それにより、ラ・レーヌ学園を退学して周囲に嘲笑されながら修道院行きが確定。貴族の女性が修道院に入る場合、寄付金により待遇が変わるのだが、バスティエンヌの場合は寄付金がないので平民と同じ扱いになるそうだ。
ちなみに、ダゴーベールの取り巻きだったゴドフロアとジョリスも大変なことになっていた。二人は婚約者のいる令嬢に手を出そうとしたのだ。それにより、その令嬢達の婚約者からの怒りを買った。彼らはブロス伯爵家やレーマリ子爵家よりも上の家格だった為、家の力でゴドフロアとジョリスの生家せいかへ膨大な損害を与えた。ピンチに陥ったブロス伯爵家とレーマリ子爵家は、それぞれ息子であるゴドフロアとジョリスを勘当して貴族籍から抜いたことでこのピンチを切り抜けたそうだ。当然ゴドフロアとジョリスは退学。平民になった二人は行く当てが全くなく途方に暮れていたそうだ。そしてダゴーベールと同じくスラム街に行き着いたのであった。その後、彼らの消息を知るものはいなかった。
また、バスティエンヌの取り巻きだったマドロンとアベリアは、ミラベル以外にも課題を押し付けていたことが判明した。課題を押し付けられていたのはミラベル同様、少し気弱な上級貴族の令嬢だった。ミラベルと同じように、自分達の申し出を受け入れないのは身分による差別ではないかと言って押し付けていたのだ。
ラ・レーヌ学園には、学園内において身分や国籍で人を差別する行為は禁止と校則で定められている。これは上級貴族が下級貴族を虐げてしまうことへの対策であったが、それを履き違えて上級貴族へ課題を押し付けたりした下級貴族であるマドロンやアベリアの件が問題視された。結果、二人は校則違反をしたということで停学処分になっていた。
また、バスティエンヌ同様に男性関係が派手で純潔を失っていた。よってそのまま退学して修道院行きが確定する。バスティエンヌ同様、寄付金がなかったので平民と同じ扱いになるのであった。バスティエンヌ達が入ることになった修道院はナルフェック王国で最も戒律が厳しいので、還俗することはないだろう。
ミラベルとナゼールはダゴーベールやバスティエンヌ達のことなどに構わず、ひたすら自分の得意分野で功績を残すのであった。
地味令嬢と地味令息の変身 蓮 @ren-lotus
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