#9 ロキの悪戯


 いつもは本を読むためにある机がいくつも合わさり、様々な料理が乗せられている。立食形式のために椅子は端に寄せられており、料理も一口二口で食べられる大きさに整えられており、飲み物も含めて目移りする程に種類が多かった。……正直、一人暮らしだからというだけではこんなにも豪華な料理を作れる説明にはなっていないのだけど、私もアンもピぃ君も、ただただ感心してしまった。


 そんな感想も落ち着いて、今はみんながグラスを手にテーブルを囲み、言葉を止めている。

「あー……」

 しかし期待されていたゾロの合図はなかなか告げられず。

「往生際が悪いよ」

「うるせー」

「もしかして、格好付けようとしてる?」

 兄様とロキに茶化されると、ゾロは一層やりにくそうに頭を掻いた。

 嫌がったところで団長はゾロだ。開幕のスピーチも乾杯の音頭だって、当然彼の役目なわけで。

「……この面子で格好付ける意味なんかないのにね」

 ロキが私だけに囁きかける体で、しかし合図待ちの静まりかえった中では十分全員に聞こえる声で囁く。アンと兄様のクスクス笑いにゾロがより一層渋面を浮かべたところで、「早くなさい。料理が冷めてしまうわ」と、ドロシーさんの尊大な一言がさらに追い詰める。

「『サンドラセバスの結婚』の一応の完成だ。しかし最初の本番は明日。[珊瑚占い]もまだまだずっと続いていく。だからこれは……なんだ、アレだ、区切りだ。数年後にもこの芝居のこと、そして今夜のことやみんなのことを思い出して語らえるように。そして数年後も今夜と変わらない喜びがあるように」

 あれだけ茶化していたみんなも、スピーチを聞くにつれ、団長の祈りに重ねるように面差しを引き締めていった。

 なんだかんだでゾロは最後にはちゃんと決めてくれる。そして、誰もがそんなゾロを信頼しているのが感じられて、……私は少し妬ましく思えた。

「乾杯」

「かんぱーい!」

 やがて宴は始まった。


 準備の時のドタバタもあったせいか、みんなお腹が空いていたのだろう。最初は口数も少なく、料理に夢中だった。主にゾロとロキの二人が……第一印象では料理が上手そうには見えない男二人が作った料理は、意外な程に上品で、見た目にも美しく盛りつけられており、……まるでどこかの高級なレストランのようだった。

「美味しい」

「お褒めいただき恐悦至極に存じます」

 私の呟きに、ロキが霞のような微笑みで返してくれた。その振る舞いこそ芝居がかってはいるが、料理の美味しさは本当だ。

「なんだか意外。二人がこんなに料理ができるだなんて」

 アンの感想は、私が先ほど兄様に聞いたのと同じものだった。しかし、それにはドロシーさんが答える。

「二人とも舌が肥えてるのよ。いいものばかり食べてきたのね」

 冗談とほんの僅かな嫌味を混ぜながらドロシーさん。

「それで自分で作れるかっていうのは、全然別の話だと思うけど」

「ピぃくんは作れないものね」

「うぐ…」

 アンにからかわれ、言葉を詰まらせるピぃくん。悔しそうなのは、からかわれた事よりも、自分が厨房を追い出されるほど料理ができないからなのだろう。

「アンだって料理できないじゃないか!」

「? 私、料理はできるわよ?」

 アンのその一言に、部屋の空気が一瞬止まった。

『はぁっ???』

 そして、私も含め、半分以上の声が重なった。

「失礼ね。家じゃ台所手伝ったりもするわよ」

「ああ、うん……ちょっと、時々、結構、危なっかしいって、おばさん言ってたっけ……」

 言葉を選びに選んで兄様がフォローを入れる。

「自分で食べる分には困らないわ。熱々のスープとか、歯ごたえのあるパンとか、ジャッキジャキのサラダとか」

 ジャッキジャキ……?

「今度作ってあげるわ。大体、ゾロもロキも細かいのよ。ウチの料理はこんな上品なのじゃなくて、もっとがばー、どさー、って感じだから」

「私も、もっと大きくて濃い味付けの方が好きだわ」

 意外な賛同者はドロシー。今も料理に合った優雅さで肉を切り分けているのに、それを好みではないという。

「きっと私たち二人は田舎者なのね」

「ドロシーさんも料理は苦手なんですか?」

「苦手じゃないわ。自分でよく作るしね。こういうのは経験が無いから段取りが判らないってだけ」

「……だから早々に台所から逃げ出したんだね」

 ロキの呟きに、ドロシーはつんと顔を逸らした。

「邪魔になるのが分かってたから、配膳に回っただけよ」

 ……ずっと兄様といちゃついてたじゃないの……その言葉を声にすることはなかった。

「僕も最初からそうすれば良かった。料理って、難しいんだな」

 ピぃくんの場合、多分本当に経験が無かったのだろうと思う。もっとも、例え自炊の経験があったとしても、今目の前にあるような豪勢なディナー作りを手伝える気もしない。……いやむしろそれを作れる二人に疑問を抱くべきなのか。

 しかしロキやピぃくんはともかくとして、ゾロはそんなに育ちがいいようには見えないのだけど。その彼が反応にやや不服そうにつぶやく。

「なんだか女性陣には不評だな」

「今僕を入れなかった?!」と、ピぃ君。むしろ私が入っていない事にも抗議したい。

 そんな私たち二人の不満顔を無視して、ドロシーは「不評じゃないわ」と告げる。

「料理は今まで食べた事のないくらい美味しいわ。それこそただの好みや慣れの問題で。……だから、次は私とアンとリディアで仕切らせて貰うわ」

 そう言ってドロシーは悪戯っぽく、私とアンにウインクして見せた。アンはぱぁっと顔を明るくさせると、「メニュー、考えておかなきゃね」と囁く。

「“チーム・庶民”なら僕も入れて欲しいな」兄様が少し気後れしながら手を挙げた。

 しかしドロシーは「あら、駄目よ」とにべもない。「あなたは脚本家なんだから。パーティをやる時は、もう次の構想を考えてなくちゃ」

 ……兄様は脚本家じゃないのに。しかしその台詞はスプーンと一緒に口の奥へと押し込めた。兄様は、「あはは……頑張ります」と情けなく笑うだけだ。


[なんだか物欲しそうな顔をしているね]

「……うるさい」久しぶりに口を利いた悪魔をいなす。

[ほらごらんよ、あの子も君と同じような顔をしているよ]

 悪魔が指し示す先にいたのはピぃくん。その様子はほっとかれた子供のようで、……私はあんな顔をしていたのか。

 ただ、その理由は正反対だろう。ピぃくんはその生まれ故に“チーム・庶民”には入れず、料理ができないが故に“チーム・貴族”にも入れないのだ。子供なんだから仕方ないとも思うが。


「アンは、もう少し料理の練習してからの方がいいと思う」

 私はみんなに聞こえるようにそう告げる。

「え、やだなぁ、大丈夫よ。今日は馴れないメニューだったから手こずっただけで……」

「嘘付け! 包丁の使い方から怪しかったじゃないか!」

 アンの反論に釣られるように猛抗議するゾロ。結局聞こえていたみたいだ。

「包丁や火を使わない料理なら得意なのよ」

 どんな料理よ。……いや、確かにそういう行程も結構あるけど。

「……ともかく、アンとピノキオの二人は、もう少し練習してからの方がいいだろうね」

 私が呆れている間に、言いたい台詞をロキが取っていった。目を向けると、こちらに目配せしてみせる。……どうやらフォローしてくれたらしい。

「まずは基本を二人一緒に練習して、それができるようになったら、ピノキオは僕たちのチームだ。二人だけじゃあそっちとのバランスも悪いからね」

「なるほど。お互い二人+足手まといの三人チームというわけね」

「誰が足手まといよ」

「誰が足手まといさ」

 二人の声が重なる。いつの間にかいつもの調子。ゾロは呆れ、ロキは笑っている。

「この期に及んで自覚ねぇのかよ……」

「二人ともちょっと不器用なだけさ。大丈夫、僕が教えてあげるよ」

「……! いや、いい! 他の誰でもいいけど、ロキにだけは教わりたくない! 嫌な予感しかしない!」

 突然身を引くピぃくん。食べかけのミートボールがフォークと共に皿に落ちた。

「えー、酷いなぁー、君とは同じチームじゃないか」

 言葉とは裏腹に、大して傷ついてる風でもなく、むしろ彼の反応を楽しむように、ロキは言う。

 きっとみんな思ったはずだ。何か企んでいる、と。それはピぃくんもまた同じ筈で、彼の言う“嫌な予感”とはつまり、自分が標的にされているという直感に他ならない。……いや、どうやらそれだけではないようだ。

「……お、お前と、お、同じと、思われるのが、い、嫌なん……」

 ピぃくんの嫌がり方が尋常ではない。顔を真っ赤にして、舌も覚束ない。ついに彼は、口元に手を当てたり、あるいは大口を開けて貪るように息を吸い込んだりを繰り返すようになった。

「ピぃくん? どうしたの?」

 流石に心配になってくる。笑っているのはロキだけだ。

「見事に“当たり”を引いたね。あははは…… 逃げられないんだよ。拒否したって、僕の手の内さ……おぶっ!!」

 最後の悲鳴は、ピぃくんがロキを蹴り飛ばした音だ。口を押さえ、涙目になりながら、ピぃくんの跳び蹴りは、綺麗にロキの脇腹に直撃した。

 ゾロと兄様が二人を止めに入る間、私はピぃくんの取り落としたミートボールの、食べかけの断面の、その見た事のない程真っ赤な様を見て、……おおよそ理解した。同じミートボールを私は勿論、みんなも食べていたが、あんなに真っ赤なものはそれ一つだけだった。

「当たりなもんか! 明日が本番だっていうのに、何を喰わすんだよ」とピぃくん。

「いや、明日が本番だっていうのに、跳び蹴り喰らわすのも駄目だよピノキオ」と真っ当にピぃくんを抑える兄様。

「落ち着け! 全面的にコイツが悪いのは分かってるから! いや、俺の監督不行届でもあるのか」とロキを締め上げながらゾロ。

「……途端に全部怪しくなってきたわね」と、テーブルの他の料理を睨みながらドロシー。「ロキ、他に入れてないでしょうね」

「ああ、そのミートボール一個だけだよ。ちょ……苦しいってば、ゾロ……“当たり”は出ちゃったんだから、ほら、あとは安心して楽しい食事の続きといこうよ、ね、ゾロ、みんな、……けほっけほっ……」

『……………』

 沈黙、ドロシーが、ゾロが、兄様が、……ロキと付き合いの長い三人が、疑惑の眼差しをロキに向けている。そんな中……

「あ、あったよ」響き渡るアンの声。「ほら、見てよ。ひとくちパイ包み。こんなに真っ赤」

「あー、見つかっちゃったか。じゃあ、残り、は……」

 ロキの心底残念そうな声は、みんなの凄い勢いの眼差しで尻すぼみに消えていった。しかし、聞き逃した者は誰も居ない。

「……つまり、まだあるのね」

 私が呆れた声のため息を漏らしたところで、

「食べちゃえ!」

 意外な声がアンの方から。

 振り向いた時に彼女は、自分が前もって見つけていた真っ赤な……食べるだに恐ろしいそのパイ包みを、思いっきり口に入れていた。

「ちょっと、アン!」口を押さえるアンに駆け寄る私の鼻腔に、微かに嫌な匂いが入ってきて、私は思わず口元と鼻を押さえた。

「あははは! かっらーい! なにこれ! 一体何を入れたらこうなりゅの?! あはは!」

 アンまで様子がおかしい。想像を絶する辛さに涙目で堪えながら、彼女は楽しそうに足をばたばたとさせているのだ。

 匂いも合わさって、一目瞭然。酔っ払っている。アンのジュースの中に、お酒が入っていたのだ。

 ケタケタという笑い声が響く中、誰もが一斉にロキを見た。彼はすっかり取り押さえられて尚平然と、こう言い放つ。

「明日が本番だっていうのに、まさか暴力はないよね」



 「悪戯好きの愉快犯」……というのが、ロキに対する私の印象。初めて出会って以来、これは覆ってはいない。

 彼は快楽主義者というわけでもないのだろうけど、基本的に今が楽しければそれでいい…くらいには考えているようで、後先考えずにくだらない悪戯を仕掛け、あるいは周囲を焚き付け、巻き込んでは騒動を大きくしようとする。それでいて、本人は騒動の外から涼しい顔で眺めている。そういうことが好きであるらしい。

 勿論、標的にされた者や収拾の付かなくなった全員から懲らしめられることもままにある。今もまた、反論する言葉も無くしたピぃくんが跳び蹴りを食らわした。

「本番前だからって僕が手加減すると思ったか!」

「ちょっ!? ピノキオ! 顔は! 顔は駄目だって!」

「うるさい! そういうことを盾にする奴が一番嫌いだ!」

 とはいえ、一番身体の小さなピぃくんのこと。あれはあれで適度な反撃に違いなく、実際ロキは口に動揺を出しながらも、あまり痛がっている様子は無い。もっとも、ロキにしてみれば、そこまでが織り込み済みなのだ。いつだか兄様が言っていた。「相手に懲らしめられるまでがロキの悪戯」なのだとか。

 ……いや、遠足じゃないんだから。



 こんなロキだが、意外なことに[珊瑚占い]随一の美形である。……いや、よく見なくともそれは周知の……と言うより、私たちは彼のこうした本性を知っているから、プライベートでは三枚目の扱いだけど、整った顔立ちや高い上背、線の細い引き締まった身体、甘いマスクと声など、そのあたり“だけ”を見ると、「町中で十人の女の子に声を掛けると三十人集まってきた」という冗談のような伝説にすら信憑性を感じる。彼の家系は舞台役者の大家であり、(私たちの前での残念な性癖さえ除けば)、その振る舞いや表情、声色や仕草のひとつひとつに至るまでに本物じみた気品が感じられるのだ。

 一言で言うなら中性的な美男子。役者不足の[珊瑚占い]においては、これ幸いにと便利に使われ、ピノキオと共に女役を演じることも少なくない。ただ、ピノキオと違うのは、彼が演じるのは大人の女性であることと、彼自身がそういった役を実に“楽しそうに”こなしてしまうこと。

 実際、彼は器用だ。何をやらせても人並み以上にこなしてしまう。それは、例えば今日のような豪華なディナーを作れてしまうというようなことだけではなく、舞台上での役回りにも言える。経験も豊富で、立ち位置の難しそうな役でも彼はそつなくこなしてしまう。

 ゾロなんかはそんな彼を多少妬ましく思っているようだが、私が思うに、ゾロとはタイプが正反対だ。……これは兄様に確認したわけではないのだけど、ロキは物静かで一歩引いた雰囲気の、“立ち位置の難しい”脇役が向いていて、実際そういった役が毎回振られる。対してゾロは直情的な演技が得意で、前へ、前へと出て行ける主役向きである。それでもゾロが妬ましく思うのは、脇役を何の苦労もなく楽しそうに演じるロキの態度のせいに違いない。


 さて、そんなロキがこの『サンドラセバスの結婚』で演じるのは、彼女を苛めるもはやお馴染みの継母と、王子の側近、そして魔法をかけられた家具たちの声も、舞台袖から幾種類か使い分けながらやることになっている。

 ……いくらなんでもいいように使いすぎだと思う。指折り数えて思わず呆れる。もっとも、その忙しさすら、彼は楽しんでいるようだが。

[劇団における自分の役割と立ち位置を、誰よりもよく理解しているのさ。……ところで、今彼が陥っているピンチも、“計算ずく”で“楽しんで”いるのかな]

 悪魔が促す先では、ロキへの懲罰が新たなステージに突入しようとしていた。


「お、もう一個はっけーん! 夏が来る前の木の葉みたいに綺麗な緑色。きっと、すっっごく苦いやつだね」

「今度は食べちゃ駄目よ、アン。“あれ”に食べさせるんだから」

「ほぅ… 辛いものだけじゃなかったんだな」

「まだあると思うかい?」

「あるだろうなぁ…… コイツは盛りつけやってたから、仕込み放題だ」

「あははは……、だよねー……」

「次はコイツだ。片っ端からどんどん喰わしてやる!」

「ちょ、ちょっと!み、みんな!? 明日が本番だって忘れてない!? これじゃあ、喉がどうにかなっちゃうよ!」

「やだなぁ、明日が本番だっていうのに、そんなどうにかなっちゃうようなものが入っているわけないじゃないか。……ねぇ、ロキ…?」

「それに、食べ物を粗末にしちゃいけないわぁ。皿まで食べろなんて言わないけど、せめて作ってくれたコックに敬意を払うべきでしょう?」

「……きょ、恐縮です。っていうか、王子様も王女様も怖いよっ?」

「なんて酷い顔! キャハハハ! ほら、あなたに相応しい餌をくれて上げるわ! よく噛んで食べなさい!!

「き、君が苛めるのはサンドラセバスの方だろ!? ああ! 辛いものの連続は止めてっ! さすがに!」


 アンが仕込まれた料理を探し、兄様とゾロが抑えつけ、ピぃくんがそれを無理矢理彼の口へと詰め込む。合間にドロシーがコップの水を飲ませてあげるのだが、これもまた拘束されている者にやると、慈悲と言うより拷問に見える。さらに、みんな時々芝居の役が入るから、場が非常に混沌としてきて実際の人数よりもずっと多くの男女が騒いでいるような気がしてくる。

 ただ、こうしたやりとりも見慣れてくると、あれだけやられている当のロキが何処か楽しんでいることにも気付く。

 本番前夜の、景気づけのパーティ。それ自体は恒例で、場所は違えど新しいことなど何も無いのだけど、毎回、みんな違う理由で緊張を強いられている。

 今回で言うなら、初めて主役を任されるアンと、敢えてよく知られた物語を基礎に置いた兄様。今その二人は、ロキを囲んで楽しそうにしている。

 劇団のムードメーカー。ロキの与えてくれるものは、いつだってこんなにも大きい。


[それで、君はまた見ているだけなのかい?]

「傍から見ているだけで楽しいもの。十分に」

 特に私が加わってやることもない。私は、アンによってすっかり暴かれたパイの一つを、何気なく口に運んだ。

「……ん」

 油断していた。中身を暴かれ、おかしな色の無かったものだから、普通の味なのだとばかり思い込んでいた。

 それは、酷く甘い……それこそ、デザートと思うにも気持ち悪い程に。ロキが仕込んだのは、辛いものや苦いものばかりではなかったらしい。真っ白い砂糖を入れた程度では色も変わらないから、これは食べてみなければわからないだろう。

「……私には甘過ぎ」

[食べきってごらん]

 吐き出すのも行儀が悪いから、私はなんとかそれを呑み込み、ゆすぐつもりで水を呷った。食べれない程ではない。でももうこれ以上はいらない。一個で十分記憶に残る味だった。

 それにしても、一体いくつ仕込んだんだろう。アンがまだ確かめる前の料理にも、こんな甘いのや、辛いのや苦いのが、まだいくつもあるのだろうか。

 みんな食べるのかな。それとも、このパーティ自体が中止になっちゃうのか。……終わってしまうのは、少し悲しい気もした。

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