第12話 近年お目にかからない最低最悪のカップルだと思う
生徒会長と黒髪天使のつゆちゃんが木の下のベンチで座っていた。
どうして、あそこにつゆちゃんが?
あー、あんな近くにー、うわー、なんか見つめ合い始めたよー!
ダメダメダメダメ‼
「ちょっとアンタ、あのカップルを見てどう思う?」
「近年お目にかからない最低最悪のカップルだと思う。だから、さっさと別れるべき」
「アンタ……」
目をパチクリさせる副会長。
なんだ、ぼくの発言で失望したか?
「……よく分かってるじゃない!」
「何が?」
「あのカップルはさっさと別れるべき、そう思うのよね?」
「当り前じゃないか。あの二人が別れないと不幸になる人がいる」
特にぼくとか。
「そう、まさにそうなのよ!」
「お、おう」
なんでそんなに喜んでいるのか分からないけど、良かったね。
「アンタと初めて意見があった気がするわ」
「お、おう」
「でも、こんなゲス野郎と付き合うことになるなんて、わたしの人生最大の汚点だわ」
ぼくはツッコまない。だから、話を進める。
「そもそも、なんで副会長はカップルあみだに参加してんの? この学園での人気度を考えれば男なんて誰でも付き合えると思うのだが?」
「アンタにしては、ちゃんとした意見を言うじゃない」
「あ、そうですか」
アンタにしてはって……おまえとちゃんと話したのは今回で初めてだからな。ぼくの何を知って言っているんだ?
「そう、アンタの言う通り、わたしはカップルあみだに参加しなくても、そこらの男どもと付き合うなんて造作もないわ。だけど、たった一人だけ——」
副会長は少し悲しそうな表情でつゆちゃんカップルを見ていた。
「——わたしに振り向かなかった殿方がいたわ……その方がカップルあみだに応募したからわたしも応募したのよ」
「あー、もしかして、副会長は会長が好きなの?」
バッとこちらに振り向いて、赤くなっていく顔に口をパクパクとさせて動揺をしていた。
わっかりやすい表情だなー。
「……そうよ」
悔しそうに下を向き、会長が好きなことを認める副会長であった。
「いやいやいや、そんなに恥ずかしがらなくてもいいよ。実はぼくだって好きな人がいてだなー」
「書記ちゃんが好きなんでしょ?」
「なんで分かったの⁉」
「そんなの分かるわよ」
「誰にも言っていないのに」
「いや、アンタの好きな人は分かりやすいから」
「そんなに分かりやすい?」
「分かるわよ。アンタ昼食の時、どんだけ書記ちゃんを見てんのよ」
「え? そんなに見てた?」
「見てたわよ、鼻の下伸ばしながら」
「やめろ、ぼくはそんな人間じゃない」
「そうかしら?」
「副会長こそ、チラチラと会長を見ていたじゃないか!」
「あ、あれは、会長がいたから仕方がなく」
見てたんだ……テキトーに言っただけなのに。
コイツは学園アイドルとして畏怖されし存在とか言われているらしいけど、中身はぼくと一緒なのでは?
……コイツと一緒なのは嫌だな。そうあれだ、コイツが似ているのは何かあればすぐに人を焼肉にしようとするやべー奴らと一緒だ。人権意識がないところとか、同じ感じだよね。
「そんなことより、話が脱線したわ」
「そうだっけ? 何の話をしてたっけ?」
「アンタをここに呼び出した話よ」
カップルあみだ シドウ @jpshido
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