第11話 学園アイドル
——遅れてしまった。
「マジあいつ、あり得ないわ。約束時間を一〇分も過ぎてるし。昼休みが終わってしまうじゃない」
日の光が当たる裏庭の茂みで、独りしゃがんでいる副会長は親指を噛みながら、ブツブツと文句を言っていた。
「やっぱり、焼き肉にしてもらえば良かったかしら、もしくはわたしのファンに東京湾に沈めてもらうべきだったかしら、ブツブツ」
物騒なことを言う副会長。
おいおい、ここの学校の生徒は人権という言葉を知らないのではないのだろうか?
もう一度、小学生からやり直して道徳の勉強をしてもらいたいものだ。
「あー、もう! あいつのメールを公開してやる‼」
ポケットからスマホを取り出して、ものすごいスピードで文字を打っていた。
やばい、公開されたら東京湾にお墓が一つ増えてしまう‼
「お、お待たせ!」
「シーーー‼」
「ん?」
鼻に人差し指を立て、こちらに手招きをする副生徒会長。
とりあえず、静かにして茂みにいる副会長のもとに行き、隣にしゃがんだ。
「おっそい‼ わたしがどんだけ待ったと思ってんのーー‼」
理不尽極まりないことを言われたので反論してやる。
「いや、だって仕方がないだろう⁉ 副会長と教室で別れたあと、教室内にいる野郎どもがぼくを捕まえようと必死に追い掛け回すから逃げ回っていたんだよ‼」
「そんな野郎どもなんて、ボコボコにすればいいじゃない!」
「無茶を言うなよ! よく分からないナイフのような鋭利で襲い掛かってくる輩に立ち向かうことができるか!」
「頑張んなさいよ!」
「コイツ……」
他人事だと思って……
まぁ、山ほど言いたいことがコイツにあるから、その話は置いといてやろう。
「それになー、どうして昼食が終わってからぼくと一緒にここに来なかったんだ? そうしたら待ち合わせをしなくて済んだのに」
「そんなの、アンタと一緒に歩くのが嫌だからに決まってるじゃない」
「……」
コイツ……ぼくの命がかかっているのにもかかわらず、よくそんなことが言えるなー……おまえの行動のせいで人の命が失いかけてたというのに……
色々と言ってやりたいが、今はやめておこう。
聞きたいことがたくさんあるんだから。
「で、おまえはどうしてここに呼び出したんだ? いや、それよりもさきに、さっきから言葉遣いが荒いけども、キャラ崩壊してんぞ?」
「うっさいわねー」
「いつものキャピキャピはどうした? 学園アイドルの名が廃るぞ?」
「キャラじゃないわよ。愚民どもに優しさを提供しているだけよ。おかげで、わたしに貢ぐATMがいっぱいできたわ」
「考えが最低だな‼」
「ふん!」
ただの性悪女だった。
まぁー、そんなことは昔っから知っているけどな。
「アンタこそ、陰キャぼっちのくせによく喋るじゃない?」
「ぼくは陰キャぼっちじゃない。紳士な陰キャぼっちだ!」
「どこが紳士な陰キャぼっちよ! 紳士要素、皆無じゃない!」
「おま!」
言ってはならないことを言いやがった。
鼻くそでも投げつけてやろうか?
いやいや、落ち着け、ぼく。紳士は鼻くそを投げつけたりしない。
ここは、大人の振る舞いをするか。
ぷんすか怒っている学園アイドルに本題を切り出した。
「で、本題に入るけども、どうしてぼくをここに呼び出した?」
「そうだったわ。アンタがごちゃごちゃ言ってるせいで、忘れてたわ」
コイツはいちいち、なにかを言わなければ済まない性格なのだろうか?
反論しても話が先に進まないので黙ることにした。
「あそこを見なさい」
「ん……あれは!」
彼女の指がビシっとさす方向には――
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