第10話 臓器か? 臓器が目的なのか?
「ちょ、ちょっとトイレ行ってきます」
ぼくが席を立ち上がった瞬間、副会長は誰をも引き寄せるニッコリとした笑顔で、周りに聞こえない声でひそひそと話し始めた。
「アンタ、もし、今どこか行ったら、わたしに送ったメール全校生徒に公開するから。そしたら、わたしのファンが何するか分かるよね?」
めっちゃどすの利いた声なんですけどー。どこからそんな声が出てくるのー‼
しかも、目が今にも獲物を食い殺そうとするヘビみたいだし!
こっわ、めっちゃ怖いんですけどー!
ぼくはすぐさま、椅子に座り直した。
ここはおとなしく従うことにしよう。
もしも、あのメールを公開されたら東京湾に沈められる。
前に、副会長にアンチメールを送った人が東京湾に沈められたと聞いたことがある。副会長の熱烈のファンが犯人だとか何とか……
どうやら、副会長のバックには謎の組織があるらしい。
東京湾に沈められるのは絶対に嫌だ。だから、ここは言うことを聞くしかない。
「いやー、トイレに行きたくなくなったなー!」
「あ、そうなんだ~♪ じゃー、話の続きしようね~」
「う、うん。そうだね……」
「それでなんだけどー、さとしくんがザーサイくんだよね? うそをついたら皆にメールを送っちゃう♡」
「ぐぬぬ」
表面上はとてもかわいい笑顔だけど、心の中は悪意の塊しかない。
こえーよ、その笑顔。
どうしよう、この質問……
ここは正直に答えるべきだろうか?
でも、正直に答えると、ぼくは後ろにいる奴らにすぐさま焼き肉にされる。
かといって、嘘をついたら東京湾行き。
高校一年生でこんなどっち選んでも詰みになる選択を迫られるなんて考えもしなかった。
っくそ、ぼくは一体どうすればいいんだ!
「さとしくん? 聞こえてる?」
あー、どうすればいいんだ?
どの道もぼくは死んでしまうじゃないか……
「聞こえてないみたいだね。じゃー、メールを公開して——」
「はい、ぼくがザーサイです!」
「あ、やっぱり、そうなんだね~」
「あ……」
言ってしまった……
ビクビクしながら後ろを振り返ると、そこには巨大な機械と道具が揃っていて、どす黒いオーラを放っている野郎どもの目はギラギラしていた。
さて、逃げるか……あれ?
なぜか、身動きができないんだけど……
下を見ると、ぼくの体はロープでぐるぐるに巻かれていた。
いつの間に‼
巻かれているロープから一本だけ伸びていて、それを目でたどっていくと昨日、出会った赤髪の子がいた。
その顔はライオンが草食動物を狙うかのようであった。
やばい、やばい、やばい、焼き肉にされる‼
ぼくの人生、これで終わるの?
しかし、そんな危機的状況を救ってくれたのは副会長であった。
「みんな~、さとしくんは悪くないから許してあげて?」
『『『……』』』
「お願い、わたしに免じてさとしくんを許してあげて、ね?」
『『『イエスマム‼』』』
周囲を見回すと、後ろにあった焼き肉用機械がなくなっていて、ぼくの体に巻かれていたロープが解かれていた。
ふー、助かった。もう少しで焼き肉になるところだった。
でも、なんでこいつはぼくを助けようとしてくれたのか?
副会長を馬鹿にしたあのメールを読んだのなら、ぼくを潰してもいいはずだ。それなのにしなかった。
なぜだ? 何が目的だ?
臓器か? 臓器が目的なのか?
ただ、焼き肉にして食べても勿体ないからぼくの臓器を売るつもりなのか⁉
ゆっくりと顔を上げ、副会長に向き直り、危機に備えて構える。
だけど、副会長は意外にも優しい言葉を投げかけた。
「一緒にご飯を食べましょう♪」
「あ、うん……」
そうして、クラス中の生徒からジロジロと見られながらぼくたちは昼食をとった。そして、副会長に言われて五分後に裏庭のひとけのない草むらに待ち合わせになるのだが——
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