黄金幻想

文重

黄金幻想

 山寺の門前。掃いても掃いても一向に減らないイチョウの落ち葉と小僧は格闘していました。明け方の雨に濡れた葉は未だ乾き切らず、小僧の竹箒の運びを鈍らせます。和尚様は掃除も修行のうちといつもおっしゃいますが、仏門の入り口に立ったばかりの小僧には、何がどう修行なのか皆目見当もつかないのでした。


 陽が昇ると共に湿った落ち葉もだんだんと乾き、ようやくあらかた集め終わることができたと思った刹那、いたずらな北風がぴゅうと吹いて、せっかくできた黄色の山を崩してしまいました。


 小僧はがっくりと肩を落とし、しゃくり上げながらもまた端から落ち葉を掃き集め始めるのでした。

 するとどうでしょう。イチョウの葉がひとりでに舞い上がり、見る見る何かの姿を形作っていくではありませんか。



 なかなか掃除が終わらない小僧を叱りに出てきた和尚様が目にしたのは、黄金の鱗を朝日に煌めかせて泳ぐ鯉に、導かれるように軽やかに箒を操る小僧の姿でした。

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黄金幻想 文重 @fumie0107

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