第10話:妹はオカズじゃありませんよ?

「何を言って――というか、実の妹で抜けるか……っ!!」


「やれやれ、贅沢な悩みですね。電子データではなく、手頃なオカズがこうしているというのに。『三次元じゃ抜けない』だなんて」


「そういう話をしてるんじゃ――お、おぉいぃぃ~っ!?」


 胸が押しあたる。


「成人してからでは、遅いんですよ? 兄さんが大学生になる頃は、私はまだ女子高生ですね。それだと色々な法律に触れてしまいます。あぁ、でも、私が兄さんを訴えなければ、何も問題はないのでしょうか。それはともかく、中二の今……。少し遅めの初潮を迎えたばかりの、孕み頃のメスを好き勝手できるのは、この世で兄さんだけなんですから」


「なんつーこと言うんだ……」


「ねえ、兄さん。我慢は体に毒ですよ」


「我慢、なんて――」


「はぁぁ……息をするように嘘をつけるなんて、さすがは兄さんです」


「何を言って~~……っ!?」


「私、すべて知っているんですよ? 兄さんの性癖も、お気に入りのオカズも。昨晩は、どんな妄想で、何度、お慰めになられたのかも」


 そんなはずがない。


 そう思っても、この妹ならやりかねない。


 完全には否定しきれない自分がいた。


「そもそも、義妹なんて邪道です。妹は、実妹に限ります」


 胸を張らずとも、服越しで分かる。


 たしかな膨らみがそこにあって、つい、目が吸い寄せられる。


「……血が繋がってたら、マズい……だろ――」


「何を甘えたこと言っているんです。シスコンの風上にも置けませんね。言って聞かない兄さんには、きちんとした教育が必要なようです」


「だいたい、リアル妹がいる身で、実妹なんて――」


「へ~え……」


 視線が下がる。


「では、なんです? これは」


 一点を凝視する。


「生理現象なのは分かりますが、その理屈でいうと、萎えるのが普通なのでは? それなのに……兄さんのこれは、どうして小さくなる気配がないのでしょう~不思議、ですね」


「いいから、もう。出ていってくれ……」


「では、そろそろお暇しますね。夕食は時間をかけて作りますので。では、兄さん……ごゆっくり」


 妹が出て行くと、部屋が静まり返る。


 妹に見られるだなんて、兄としてあるまじき姿だ。


 いまだ収まらず、情けなさすぎる。



 ここで折れたら、本当に妹でしたことになってしまう。


 それに、この後また、夕食で会うと思うと、気まずいなんてもんじゃない……。


 一回は、我慢した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

敬語妹はダメ兄製造機 ~見てしまったんですね、兄さん~ 処雪 @yutono

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ