第9話:やましいこと、無いんですよね?

 そう聞かれて、ないと答えると、急に話題を変えられた。


 なにか聞きたげだったのに、それ以上聞かれないのが、妙に引っかかっていた。


 それからは、今夜のおかずだとか。


 ハンバーグ、煮込む、写真……。


 そもそも、おかずがどうとか、そんなの言われた試しがない。


 それに、いちいち聞かずとも、写真なんて――――ッ!?



 嫌な予感がした。


 すぐさま、エクスプローラーを開き、秘蔵フォルダにアクセスする。


 持って回ったような言い回し。


 あれが何らかのヒントだとするなら……。


 開くのに、やたら時間がかかる。


 高速でファンが回り、高熱にうなる。


 スペックがスペックなので、遅いのには慣れっこだ。


 けれど、今日はあまりに遅い。


 冷や汗をかく。


 まさか、そんなわけ。


 

 ハードディスクに隠してある、”新しいフォルダー(11)”。

 

 無論、フォルダ名はカモフラージュだ。


 ダブルクリックすると、フォルダ一覧が表示される。


 一つ一つ、確認していく。



 やっぱり……。

 

 嫌な予感に限って当たる。


 ”義妹”ではなく、”実妹”。


 一字違いで、すぐには気づけなかった。


 一軍のオカズは一新され、二次元実妹キャラの画像が、上書き保存されていた。


 すごい数だ。


 一度に表示しきれず、画面がカクつく。



 これだけの数、たった1日で用意できるはずがない。


 1,000を超える画像だ。


 このパソコンだけで集めるのは、ほとんど不可能だろう。


 ということは、最低でも数日かけて、データ収集。


 エロ画像はあらかじめ用意していたということになる。


 妹……。


 戦慄する。

 

 ◇◇


「そうそう、言い忘れていたのですが……先ほど、兄さんのパソコンをお借りしました。すみません、事後報告で」


 すぐ後ろで声がする。


 閉めたはずの扉が開いて、いつの間にか、隣まで来ていた。


 ノックにも気づかないなんて……。


 エプロンのまま。


 ほのかに、ソースの香りがした。


「だいぶ重たかったので、パソコンも軽くしておきました。そういえば、一つ容量が大きいフォルダがありましたね。間違って消してしまったので、代わりのモノを入れておきました。ご入用の際は、そちらを使ってくださいね」


「な……ぁ、っ……!?」


「ふふ、そんなに固まってどうかされましたか? やましいことがないのなら、何も問題ありませんよね? それとも、この期に及んで、まだ隠しごとがあるのですか?」


 もたれかかり、指が胸板を伝う。


 上目遣いに、確信犯を悟った。


「まったく……強い性欲も困りものです。そうです、兄さん……よろしければ、私が抜いてさしあげましょうか?」

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