第14話 お金がないは言い訳にならない

  そんな折、日本人補習校で知り合った他の教師が別の職業として持っていた、通訳という沙織にとってはまったく新しい分野の仕事まで舞い込んで来るようになった。


 それは、補習校の教師という、思ってもいなかった仕事を"Just do it"したからこそ得られた縁だった。


 そんなこんなで、最初はアメリカでのサバイバルを目的として働き出した沙織だったが、教職はもちろんのこと、努力の結果が形としてはっきりと現れてくる仕事というもの自体に大変な魅力を感じ始めていた。


 更に、仕事という媒体を通すことにより、日本以外の国においてさえも、人々が自分を一人の人間としてちゃんと認めてくれているという事実自体が、長い間自分に自信が持てなかった沙織にとって驚くべき現象だったのだ。

 

 ジュリアンが小さかった頃、沙織は費用の心配が出ないように、近所の母親たちに「ベビーシッター交換クラブ」を提唱。


お互いによそ様の子供の面倒を交代でみることで自分の子供の面倒もみてもらい、ベビーシッター代を浮かした。その後もそうやって共働きの子連れでもなんでもなんとか仕事をこなすことができた。


 更に、自分に備わっていた少しばかりの特技を生かして、自分にない特技を持っている人々と「特技の交換レッスン」まですることで、学校への高額な授業料を払うことなくどんどん新しい知識を自分のものとして取り入れていくこともできたのだった。


 まさに、「お金がないは言い訳にならない」ことを次々と証明していったのだった。


To be continued...

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