第12話 芽生え始めた自信

 トンプソン先生があまりにも突拍子もないことばかり始めるので、一体何を?と眉を吊り上げていた何人かの親たちも、少しずつ沙織の意図を理解し始めてくれた。


 というのも、子供たちの成績がどんどん上がっていったからだった。なんと喜ばしいことだろう。


 それにもまして、子供たちは、彼らの目線から話をする先生に対して何かしら温かい想いを胸で感じ始めていたようだった。


 沙織がトイレで用を済ませて出てくると、教え子たちの何人かが列を作ってトイレの前で待ち構えているではないか!沙織の姿を見るや否や、我先に先生にアメリカ式のハグをしようとクラスの生徒たちが体ごとぶつかってきて、まるでセレブを囲むファンのごとくであった。


 それを肌で感じ取った沙織は、教師としてなんとも言えない幸福感に浸っていた。


 そして、その時、教えるという仕事が心より大好きな仕事の一つとなっていた。


 と同時に、どんなことをしても、努力の結果が形として出てくる仕事というものに沙織は大変な魅力を感じ始めていた。日本でイラストレーターとしても女優としても十分なことができなかったことから自分に自信が持てなかった彼女に、生まれて初めて自信というものをもたらしてくれた。


 アメリカという遠い国までやって来て見つけた健康なる自信と愛に支えられた幸福感こそ、沙織が長年求めていたものだったのだ。


To be continued...

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