12/9 【読む】四谷軒「叫んで五月雨、金の雨。 ~或る王妃の生涯~」
・「叫んで五月雨、金の雨。 〜或る王妃の生涯〜」
→https://kakuyomu.jp/works/16816927863102812537
政略結婚として王太子に嫁いだ「私」だったが、野心的な十歳年下の男と再婚し、子宝に恵まれる。しかし、彼女とその子供たちの生涯は、決して平穏なものではなかった……。一人の王妃が、自身と王となった子供たちのことを回顧する歴史物語。
私の自主企画「問えば響く君の答え」の「明日はどんな唄を歌おう?」への参加作であり、毎月主催者が異なる同題異話でおくとりょうさんが提示したタイトル「叫んで五月雨、金の雨。」への参加作品。二つのお題系自主企画への参加、プラス、実在した人物と歴史の物語に組み込むという、ウルトラCを実現させた傑作。
四谷さんは私の同題異話にも毎回参加してくださって、その高いクオリティと深い歴史知識を生かした物語を書いていて、毎回「ヒー!」と恐れながら読んでいる。名前を伏せられていて誰か分からない登場人物が、「あのビックネームだったか!」となる瞬間が気持ち良すぎて癖になる。
で、今作の中心人物についてだが、実はすごく悪名高い人らしい。その国の歴史について詳しくないけれど、たまたま以前に読んだ『ボートの三人男』で、この人に関するエピソードが出てきて、未来の国民からは嫌われているようには感じた。それが、ちゃんと魅力的に描かれているのがすごい。
歴史上の人物って、そう簡単に「良い・悪い」を決められないものだなぁと、四谷さんの作品や歴史小説を読んでいて強く思う。私は織田信長が好きだけど、『黒牢城』に出てきたエピソードにガクブルしていたから、一面だけで断言できない事だろう。いや、ジェノサイドは駄目だけど。
悪名高い人物にも、愛情持った目線を向けられるかが、歴史ものを書けるか否かの分かれ道なのかもしれない。その点では、四谷さんはどんな人物にも、平等な慈しみを注げるので、魅力的に描けるのだろう。
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