タグ:官能、腹黒、レズ、触手、夢小説

 教室棟、2年C組教室。

 放課後。


「……」


 ボクは、そこにいるのかいないのかも定かではないほどに存在感を希薄にさせて、鞄にプリント類をしまっている。


「…………」


 やがて立ち上がると鞄を肩に提げ、誰とも話さず、誰とも目を合わせないまま、教室を出る。放課後の廊下は喧騒にまみれている。最近流行りのTikTokの動画を撮っている女子生徒。ギターケースを背負って馬鹿笑いしている男子生徒。

 ボクの嫌いな、キラキラとした青春。

 息が詰まる。

 苦しい。死にたい。

 足早に、しかし早すぎて目立たないように、部室棟への最短ルートを歩く。

 リノリウムの床を上履きで踏む。きゅ、と足裏で音が鳴る。階段を下りて、角を曲がった。

 職員室が前方に見えた。

 見慣れた金髪ツインテールの少女が教師と何事か話している。

 虹絵ちゃんだ。

 ボクは泣きたくなった。虹絵ちゃんに甘えたい、そんな気持ちが膨れ上がった。

 虹絵ちゃんは、職員室に消えていく教師へ軽い会釈をしていたが、やがて自分の方へ歩いてくるボクに気がついた。


「あら、佐藤さん。こんにちは」


 虹絵ちゃんは優雅に微笑んで、ボクを名字で呼んだ。

 ボクも答える。


「こ、こんにちは、……生徒会長……」

「佐藤さんはこれから部活? 私も部室棟へ向かうところよ。一緒に行きましょう」

「う、うん……。あの……生徒会長……」

「なにかしら?」

「もう周りに誰もいないから、漫研での感じにしてもらえると、嬉しい……」


 虹絵ちゃんは両眉を上げ、それから、くすっと笑った。

 ふたりして、隣同士で歩き出す。


「そうね。ちょこちゃん」

「エフ……ウフュフ……」

「もう、ちょこちゃんったらまたドブ陰キャスマイル出てるわよ」

「ど、ドブ陰キャ!? だ、だって、虹絵ちゃんと放課後こうしているの、楽しいから……」

「ふふ。私も楽しいわ。でも、これから生徒会が忙しくなると、ひょっとしたらだけど……漫研をやめなくちゃいけないかも……?」


 ボクはナイフを突然突きつけられたかのように顔を引きつらせた。

 虹絵ちゃんと一緒の時間が減る。

 虹絵ちゃん、と、一緒の、時間、が。

 嫌だ……

 怖い…………

 すがるようにボクは虹絵ちゃんの顔を見る。きっとボクは棄てられた子犬のような表情をしていただろう。

 虹絵ちゃんは、


 ぞくっ、と愉悦に頬を歪めていた。


「なーんて、冗談よ、ちょこちゃん。からかいたくなっただけ」

「な、なぁんだ……よ、よかった……フュフ……」


 ボクは安堵する。同時に、虹絵ちゃんは相変わらずだ、とも思う。

 相変わらず、

 虹絵ちゃんはボクに必要とされることで快感を得ているのだ。そして、そのためにボクを「使っている」。

 もちろんそれは一面でしかなく、虹絵ちゃんはボクを大切に思ってくれていることに変わりはないだろう。普段はボクという陰気な人間の心を尊重してくれる。二面性。虹絵ちゃんが他の生徒の前では清楚で高潔な生徒会長であり、ボクの前では変態でスケベな女オタクであるのと同じようなものだ。

 愛したい。使いたい。愛用したい。

 その虹絵ちゃんの欲望にボクは応える。無垢を演じて、騙された振りをする。

 そうすることで、ボクは、


「そんなに私と一緒にいられないのが寂しいの?」


 虹絵ちゃんが頬を紅潮させ、ねっとりとした瞳でボクを見る。

 好きなんだね、虹絵ちゃんは。ボクのことが、本当に。

 ボクも好きだよ……虹絵ちゃん……。


「さ……寂しいよ……! ずっと、いてほしいよ……。大好き……なんだもん……」


 目を潤ませる。寂しそうに震える。

 演技ではない。本能からくる反射で涙と震えが来た。

 怖い。こんな方法で、虹絵ちゃんをいつまで繋ぎとめていられるだろう。虹絵ちゃんは魅力的だ。たくさんのカッコいい男が、可愛い女が、人間性のしっかりした大人が……これからも虹絵ちゃんの前に現れる。ボクはその全員に勝てる気がしない。ボクにあるのは弱さだけ。虹絵ちゃんを手に入れられたのは、貧弱で陰鬱で不幸なボクに許された最後の奇跡だ。

 絶対にこの奇跡を手放したくない。


「ずっと……ずっと一緒にいてね、虹絵ちゃん……」


 隣を歩く虹絵ちゃんの手は握らない。代わりに小指を、きゅ、と弱く握る。

 控えめな小動物感を出し、虹絵ちゃんの性癖を刺すテクニックだ。

 こうすることで、虹絵ちゃんは更に目をとろかせて――


「ちょこちゃん」

「フュ?」


 予想に反して、虹絵ちゃんは真顔だった。

 ボクがきょとんとしたのも束の間、虹絵ちゃんは急にボクの手を引っ張って階段裏に連れ込んだ。そこには使われなくなった学校机や椅子が置き去りにされている。廊下からの眩しい光は届かない。薄暗く、埃が溜まり、淀んだ空気で満たされていた。

 ボクは不思議とその空気が嫌いではなかったが、いまはただ、虹絵ちゃんの凄味のある気迫に後ずさる。

 どうしたのだろう?


「虹絵ちゃ……?」

「もう我慢できない」


 虹絵ちゃんは呻くように呟いた。誰に言ったわけでもなく、ただ口を衝いたようだった。虹絵ちゃんは自らの制服のボタンを素早く外していく。その指先の細やかさ、爪の桜色に、ある種の官能を覚えてボクは陶然とした。しかし我に返ればボクの眼前で虹絵ちゃんは上半身のブラウスをはだけている。豊満な胸を覆う、純白の高貴なブラジャー。

 悲鳴も出せずに声を上ずらせ、更に後ずさるも、棄てられた机に腰がぶつかり、それ以上逃げることができない。籠の中の鳥。虹絵ちゃんという上位の存在に閉じ込められてしまったのだ。ともすれば恐怖となりうるその事実はしかし、ボクに表現しようのない興奮をもたらした。呼吸が荒くなる。息を吐き、そして吸おうとした刹那にボクの唇は虹絵ちゃんに塞がれた。脳髄が蕩ける。恍惚で満ちる。接吻の時は目を閉じる、などというマナーを無視し、涙目で見つめ合いながら互いを貪った。脚に力が入らず震える。酸素も足りない。ぢゅるぢゅると舌が絡み合う。息を吸うことができない。ボクの眼球がぐりんと上を向く。お、ご、と下品な声が洩れる。ぬちゃり、と粘性のあるものがボクの体を這った。見れば、それは触手だった。ショッキングピンクの触手が虹絵ちゃんの背中から幾本も伸び、それぞれがボクのブレザーを、ブラウスを、スカートを、ゆっくりと脱がし始めている。唇が離れた。唾液が糸を引いて垂れる。虹絵ちゃんの瞳孔が、縦に裂けている。


「黙っててごめんね。私、触手の怪物なの」

「に、にじえ、ちゃ」

「犯すわね」


 触手を巻き付けたボクを優しく持ち上げて、虹絵ちゃんは、ボクの肢体を弄び始めた――――


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★★★クリエイタープロフィール★★★


name:ちょこ

comment:吹っ切れてる夢女です。虹絵ちゃんにバレたらこのアカウント消します。
















 エロ小説をスマホで探している時に↑を発見したモニカは目をまんまるにしたのであった。


「ちょこ子センパイ!!?!?!??!?!??!?!??!?!?!??!?!??!??!?!??!?!??!?!?」

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