巡るは星々の停車駅
僕はレイと一緒に色々な星を回った。
水晶でできた星。
氷で覆われた移動する星。
燃えるような真っ赤な星。
美しく輝く青白い星。
星を貫く槍を回す極点の星。
全てを飲み込む黒い星。
気がついたら僕の荷物はそれらの一部を入れた瓶でいっぱいになった。
「お土産でいっぱいだね。」
「うんそうだね。」
あの別館にあった小瓶たちと同じのを僕は持っていた。
「そろそろ着くよ。」
「どこに?。」
「私の一番のお気に入りの場所。」
そこはひとつの小島とそれ以外は海でできた星。
こんな星があるんだ。
宇宙の広さは恐ろしい。
僕はそんなビー玉のような星に降り立った。
ここは星の海岸。
ついさっき来た海岸と似た海岸。
「私、ここの海好きなんだ。」
ローファーと靴下を脱いで浅く入り、水を蹴りながら進むレイ。
懐かしい記憶と被る。
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「おい危ないぞ。」
「大丈夫よ。ほらユイも。あなたも。」
「だぁ〜。」
「こら2人とも。」
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……。でもこの記憶は僕のじゃない。
ユイ本来の記憶だ。
パシャッ。
「ユイ。何悲しい顔してるの?。もっと楽しまないと。」
レイめ。
「こいつ。うりゃっ。」
「きゃぁっ。やったわね。えいっ。」
かけにかかれ、かかりあい。
終わった頃には制服のこと気にせずにお互いにずぶ濡れになっていた。
「はぁ…はぁ…。やるわね。」
「はぁ…はぁ…。そっちこそ。」
そこからはお互いに笑いあった。
こんなに楽しいのに、幸せなのに、罪悪感感じないのは久しぶりだった。
レイのお気に入りの星を離れて、気がつけば終着駅だ。
そこは水晶の雌しべがある綺麗なお花畑の星。
光の粒子が花から宙へ上がっていく。
「レイここは?…ぐっ!?。」
なにかにぶつかった。
その拍子に僕は尻もちをついてしまった。
「そうかそうだったんだ。」
「レイ…?。」
レイが振り向き手を差し出す。
僕は手を取って立ち上がる。
「あなただったんだね。」
「えっ……?。」
「私を救ってくれたのは。」
あぁ。思い出した。
僕は前世で1人の少女を救った。
強風が吹き荒れる日だった。
もうとっさの出来事。
崩れる鉄骨の足場から少女を救った。
それがレイだったなんて。
「でもそれだけじゃない。私の…。私の娘も。ユイも。」
「えっ…。」
どういうこと。僕はユイを救った覚えがない。
「ありがとう。」
「ちょっと意味がわからない。」
どういうことだ。
頭が混乱している。
「それはね―。」
それは凄く単純だった。
本来ユイは死産だったらしい。
だけど、僕の魂が、僕が転生したことで、ユイはこの世界で生まれて生きることを保証された。
そう…だったんだ。
僕が奪った訳じゃないんだ。
その安心感が、つい嬉しくてレイに抱かれて泣いてしまった。
「ごめんね。あなたに辛い思いさせて。」
嬉しかった。
僕はしっかりレイの娘だって。その事実が本当に嬉しくて。
「本当はあなたが大きくなったら言う予定だっただけどね。私バカね。あなたを。あの人を残していってしまったのだから。」
涙を拭う。
「だから改めてお礼を言うね。」
うん。
「私を救ってくれて。」
前世の僕が。
「私の娘を救ってくれて。」
転生した僕が。
「そして今まで大切に生きてくれて。」
うん。
「今あなたを抱けて。受け止められて。」
「僕もだよ。またお母さんに会えてて。」
思い出は辛い記憶。
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