第64話 日本代表?
何年も前に、日本人ビジネスマン二人が南米でゲリラに誘拐された事件があった。どちらも無事救出されて、成田空港で奥さんと再会した場面がアメリカのテレビでも放映された。
アメリカ人と一緒にそれを見ていた真奈は、その日本人ビジネスマンたちが奥さんと再会した瞬間にどんな風に感情を示すのか興味深く見守っていた。
一緒に見ていたアメリカ人の全員は、アメリカ人がするように彼らも奥さんと抱き合ったり、キスしたりする場面を予想していたようだった。
ところが、その四人の日本人はこんな非常時でも日本人であることを忘れていなかった。な、な、何と・・・・、差し迫るカメラの前で最愛の奥さんと握手をしたのだった!
真奈は、
「あー、日本人らしいな」と見ていただけだったが、一緒にいたアメリカ人たちは唖然とした!
こういう時、アメリカでは、そこにいる日本人が一人だけだと、その日本人がまるで日本代表でもあるかのように日本人の言動説明を要求されてしまう。
案の定、すぐに質問の波が真奈を目掛けて襲って来た。
「マナ、あれは一体何なんだい?」
「あの人たちは結婚しているんでしょ?」
「夫たちはもう少しで殺されるところだったんだよ」
「なのに、握手?!」
「なんで抱き合わないの?!」
「なんでキスしないの?」
「あの人たちどうかしているの????」
「日本人は人前で抱き合ったり、キスしたりするのはみっともないと考える習慣があるから握手をしたんだよ。それは文化的な違いだよ」と言うと、
「変な文化!」と投げ捨てるように言われてしまった。
元々、握手をすることだって日本人はあまり慣れていない。なんかふにゃふにゃとした頼りない手の出し方で日本人が握手に対応している場面をアメリカで何度目撃したことか・・・。
握手は武器を持っていないということを示すジェスチャーとして始まったというから、アメリカ人は通常手を大きく開いてこちらの手をバシっと力強く握ってくる。
真奈個人としては、握手より日本のお辞儀の方を好む。なぜなら、新型コロナウイルスが騒がれる前でも、特に、寒い風邪の季節などは握手をしたことで風邪をうつされるような気がするからだ。握手をした相手の手は鼻をかんだばかりの手だったかもしれない。だから、真奈は握手をした後は、いつも分からないように隠れて手を洗うのが常だった。
To be continued...
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