第62話 会社はビッグファミリー?

 日本では、「終身雇用」が減って来ているとは言え、今でもまだ基本にあるのではないだろうか。アメリカの知人が多く職を変えているのに対して、日本の知人が仕事を辞めたという話はあまり聞くことがない。


 会社への忠誠心が強いから、会社はある意味でビッグ・ファミリーというような感覚も残っているのだろう。


 アメリカの企業の場合、会社がビッグ・ファミリーのような存在であるというメッセージを送ろうとするのは人事部ぐらいである。


 真奈の日本文化レッスンの最中には、アメリカ人社員に様々な質問をして、実際の状況を確認することを忘れないようにしていた。


「会社は自分のファミリーという気がしますか?」という問いには、ほとんどの米人がまずせせら笑いをした。


 その後で、"Are you kidding me? "(冗談でしょ?)というコメントを付け加えた。更に、エスカレートして、

"They don't care about us! "(会社はこっちの気持ちなんて考えてもいないよ。)と、ファミリーのアイディアとは程遠い発言が続く。


 それは、企業が社員の事情に関係なく冷酷に首切りをすることが日常茶飯事であることを皆知っているか、もうすでにその犠牲となったことがあるかのどちらかが原因であろうと察せられる。


 日本の会社では、自分の所属する部が、ビッグ・ファミリーのうちのそのまたスモール・ファミリーのような感覚を持つことも珍しくない。そして、スモール・ファミリーの中の父親的存在である部長は、自分の部にいる部下たちがまるで自分の子供であるかのように暖かい愛情に溢れた目で自分の部下を見守る。父親上司は自分の持つ知識や経験を子供部下たちに教え込もうとするのが日本だ。


 その裏には、今は消えつつあると言われることもある「年功序列」がバックにまだ十分残っているという安心感が拭い切れない。


To be continued...

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