第60話 過去を思い出したくない国民と過去から学ぶ国民

 これは真奈が会社で担当していた日本文化レッスン中にアメリカ人から出された実際に起きた興味あるディスカッションについてである。


 日本人上司が、「過去トラを省みてそこから学ぼう」ということをよく口にすると、それが話題となったのだ。アメリカ人はあまり言わないことだと言う。


 アメリカ人は未来と言う言葉が大好きな国民だ。未来は明るいイメージを持っているが、過去という言葉はなんだか暗い。大抵の場合、彼らにとっての過去とは忘れたいものであることが多いようだ。


 日本人にとっての過去は、現在と未来を築くために忘れてはならない意味ある貴重なものであるという感覚が強い。


 ところが、アメリカ人社員は、

「日本人上司に過去のミスばかりを指摘される。過去のミスを忘れるなとあまり何度も言われると、また同じミスをしてしまうのではないかとナーバスになり、これから新しいことに挑戦する勇気が失せてしまうからやめて欲しい」と言う。


「日本人から反省とか過去トラという言葉を聞く度に、またかとうんざりする」


「過去にあったことがたとえ良いことであっても、いつまでもそれにすがりついているのもまた今がないようで哀れだ」となかなか手厳しい。


 なんか過去アレルギーでも持っているようなほど過去を考えることを避けている面持ちだった。


 同じ日本人でも、戦争を経験した日本人と経験していない日本人の間では大きな違いがあるだろう。戦争を経験した日本人は、


 その暗い過去に関して沈黙を守る人が多かった。戦争を知らない世代の日本人の中では、戦争を経験した人々のように過去を暗く思い出したくないものとして捉える人は少ない。過去のミスと聞いてアレルギー反応を起こすほどの暗い過去を経験している人があまりいないことが理由だろうか?


 どうしてこんなに過去に対する解釈が違って来るのだろう?


To be continued...

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