第46話 偽のマネーオーダー
翻訳・通訳の仕事を通してでも日本人であることを理由に狙われた。
あるとき、ずっと離れて暮らしていた自分の本当のお母さんがデトロイトまでやって来るが、彼女は日本人で英語ができないので、コミュニケーションをするのに通訳をして欲しいと頼んできた男性がいた。
日本人のお母さんと聞いて、すっかり信用してしまった真奈は、ご丁寧にこちらの住所まで教えて、その上、次の週は泊まりがけで旅行するから通訳としての手伝いはその後にして欲しいと、いつ家を空にするかの日にちまで相手に知らせてしまっていた。
変だと気付いたのは、向こうが通訳代としてすぐに送ってきたマネーオーダーの額がこちらが請求した額の2倍ほどで、差額を小切手で送ってくれれば良いと言われ、まずは、そのマネーオーダーを現金にしようと試みたところ、全くの偽物であると郵便局の人に言われた瞬間だった。
その後も嫌な予感のした真奈は、前から予定していた泊まりがけの旅行に出発する前、地元の警察に行って事情を話し、パトカーで時折家の周りを監視することを頼んで行った。
案の定、真奈夫婦の旅行中に怪しげな人物が家の前に現れて、しばらくそこで本当に誰もいないかを確認していたらしい。
前向かいの家に住んでいた、その昔ナチスから逃れてアメリカに来たというすごい経験を持つユダヤ人のお爺さんに、そういったことが起きる可能性があったことを知らせていたのが幸いだった。
なんと勇敢にもそのお爺さんは直接その怪しげな人物の車まで歩いて行って、
「お前が何をしようとしているのかはわかっている。警察がもうすぐ来るからとっとと消えろ!」と告げて、見事その怪しげな人物を追い払ってくれたのだった。お陰で、いない間も我が家は泥棒に入られずに済んだわけだった。
オフィスでも、毎日のように建物の隅に爆弾が設置されていないか調べるという信じられないような状況が現実のものとなっていた。
今思い出しても背筋がゾッとする恐ろしい時代だった。
To be continued...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます