第43話 敗退から元気に変更!
日本の雑誌記者がデトロイトに来て、真奈は一緒に通訳兼ガイドとして同行したことがあった。
その時、記者がもう取材をする前からすでに記事のタイトルを決めていたことに彼女は驚いた。
なんと、「敗退するデトロイトの街」というのが、まだデトロイトのどこも見ていない彼が日本から温めて持って来ていたタイトルだった。
それだけに、記者はデトロイト郊外の綺麗な湖の多い地域などを見せている時には半分居眠りしかけていた。
しかし、ひとたび、
「ここからはちょっと危険ですから、車のドアのロックを確認してください」と、真奈の警告が入った途端に記者は目を覚まして、パチパチと写真を何枚も撮り始めた。
おまけに、
「どこかでアメリカ人のワーカーが日本車を打ち叩いているようなシーンが見られませんかね?」と聞いてきた。
彼は真奈より若そうだった。
「よし、ここらあたりでちょっと年上の者としてお説教をしなくては」と感じた真奈。
「記者さん、デトロイトのワーカーの皆が皆、日本車を叩いているわけではないのです。まず第一に、『敗退するデトロイトの街』というタイトルに合う記事を書こうと決め込んで来られたことはデトロイトの近くに住んでいる者にとっては大変迷惑な話です。また、デトロイトの住民に対して失礼でもあります。一口にデトロイトと言っても、デトロイト市街も含む広範囲な地域を総称してデトロイトと呼ぶのが通常なのです。そのデトロイト地域全体の様子を十分に見られた上でタイトルを決めるべきではありませんか?」
彼女は更に続けた。
「きょう記者さんの取材に協力できたことは幸いでした。なぜなら、一つだけお願いしたいことがあるからなのです。あなたの記事の載った雑誌を一部私にも必ず送っていただきたいのです。お願いできますか?」
しばらくして、一冊の雑誌が彼女のオフィスに郵送されて来た。真奈は、その記者の記事の訂正されたタイトルを見て笑ってしまった。
「デトロイトは意外に元気!」
To be continued...
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