第41話 日本の歌に酔ってのスピード違反

 真奈もそれほど模範的なドライバーであったわけではない。スピード違反のチケットを2度も続けてもらったこともある。


 1回目は、日本の友達が山下達郎の「クリスマスイブ」のテープを送ってくれた時だった。


 夜更けに、あの早いテンポの軽やかな歌のボリームを上げて聴きながら最高の気分で誰もいない道路を一人運転していた。


 その時、いきなり背後からパトカーのサイレン!真奈は道の脇に寄ってポリスが誰か悪人を捕まえやすいようにしてあげようと思った。


 と、驚いたことにそのパトカーが後追いしていたのは真奈の車だったのだ。


ポリス:「今晩は!何をしていたのですか?」


真奈:「音楽を楽しんでいたのです」


ポリス:「へー、よっぽどいいテンポの音楽だったのだろうね。なぜって、君はずいぶんスピードを出していたからね。」


 そこへ運悪く、夜遅くだったというのに数人のティーンエイジャーが自転車で通った。


 一人の青年が叫んだ。

「ねぇ、みんな、来て見ろよ。ポリスが悪い女を捕まえているぜ!」


 もう、これは山下達郎のせいである。(笑)


 アメリカでの犯罪率は日本の比ではない。毎日本当に命懸けで市民を守るべく戦ってくれているアメリカのポリスには頭が下がる。しかし、たまには悪いポリスもいる。


 真奈の2回目のスピード違反で出て来たのは、完全にポリスとしての権力を乱用した人だった。


 45マイル地帯で真奈が制限スピード通り運転していた時だった。いきなり背後に2台の車がぴったりと近接してきた。


 最初真奈は彼らの車から距離を置こうとちょっとスピードを上げてしまった。これが間違いだった。彼らは再びピタッと接近してきた。すごく嫌だったので、自分の車を脇に止めて急いでいる彼らに追い越してもらった。彼らはまるでカーレースか何かのように高スピードでビューン、ビューンと真奈の車を追い越して行った。彼らのスピードはゆうに60マイルを越していた。


 と、突然木の影に隠れていたパトカーが、真奈の車の後ろに現れた。

 それが何を意味するかをすでに学んでいた彼女は言った。


真奈:「まさか私にスピード違反のチケットをくれるわけではないですよね?」


ポリス:「僕は何かそんなことを言いましたか?」


真奈:心の中で(この生意気野郎!)「まだ何も言っていないですが、なんか言いそうな感じじゃないですか・・・」


ポリス:「その通り!あなたの予測は当たっています」


真奈:「えー、なんで????私よりもっとスピードを出していたあの二人はどうなのよ?」


 彼女も興奮してきた。


ポリス:「あなたは釣りの賢いやり方を知っていますか?」


真奈:「え、なんでここで釣りの話が出てくるの?」


ポリス:「釣りをする時は、速く泳いでいる魚は諦めて、最後で一番ノロノロして泳いでいる魚を捕まえる。それがコツなんですよ。僕はまさに今ここでそれを実行しているのです!」


To be continued...

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